~~
新型コロナウイルス禍で生活習慣のひとつとなったマスク着用のルールが緩和された。政府はこれまで屋内でのマスク着用を推奨してきたが、3月13日からは個人の主体的な判断に委ねるとした。
「脱マスク」初日となったこの日、街で見かける人のほとんどがマスク姿だった。
3年近く続いた習慣をいきなり変えるのは難しいようだが、気を付けたいのは、マスクをつけることも外すことも、人々が他者に強いてはいけないということだ。
同時に周囲への思いやりが欠かせない。世の中には高齢の人も体調に不安がある人も、重症化リスクの高い家族と同居している人もいる。マスク緩和が人々を分断することになってはいけない。
政府は、新型コロナの感染症法上の位置づけを季節性インフルエンザと同じ「5類」に5月8日に引き下げるのに先んじて、マスクの着用を緩和した。
もちろん、いつでもどこでも外していいわけではない。医療機関の受診時、介護施設への訪問時、混雑した電車内などでは引き続き着用が効果的としている。
感染再拡大の懸念は消えていない。歓送迎会などがある年度替わりを迎え、ゴールデンウイークも控えている。人の移動や接触の機会が増える時期に注意が必要なことに変わりはない。
一方で、戸外を歩くようなときでも、周囲の目を気にしてマスクを外しにくかったのも事実だ。当たり前の生活を取り戻すには、必須ではない場面でマスクを外していくことも心がけたい。
カギを握るのは適切な情報発信だ。岸田文雄首相は13日、官邸で記者団に「国民が戸惑わない形でしっかり発信していく」と語った。有言実行を期待する。
飲食やイベントなど各業界団体のガイドラインも分かりやすく示してもらいたい。地域の感染状況に留意して、マスクの着脱を決めることも重要だ。
政府の専門家らは先週、感染防止に関する「5つの基本」を示した。必要なときに着用できるようマスクの携帯を提案し、体調に不安があるときの自宅療養、換気などの3密回避、丁寧な手洗いなどを改めて呼びかけた。
マスクは、さまざまな感染対策のひとつである。マスクに安住せず、かといって軽んじず、柔軟に対応していくことが大切だ。
◇
2023年3月14日付産経新聞【主張】を転載しています