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Russian President Vladimir Putin poses for a picture with figure skater Kamila Valieva during an awards ceremony honoring the country's Olympians at the Kremlin in Moscow, Russia, on April 26, 2022. (©Sputnik/Mikhail Klimentyev/Kremlin via Reuters)
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スポーツ仲裁裁判所(CAS)は2022年北京冬季五輪でドーピング問題が発覚したフィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワに、21年12月25日から4年間の資格停止と同日以降出場した大会の失格処分を科した。
これを受けて国際スケート連盟(ISU)は北京冬季五輪のフィギュアスケート団体で優勝したロシア・オリンピック委員会(ROC)の得点からワリエワの獲得分を差し引いて3位に降格し、米国を金、日本を銀メダルに繰り上げた。
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ロシアのフィギュアスケート界の重鎮、タチアナ・タラソワ氏はロシアメディアに、「彼らは私たちの国を憎んでいる。ロシアへの憎しみを一人の少女にぶつけるなんて」と怒りをあらわにしたと伝えられる。
タラソワ氏の言い分は、一部正しい。厳しい処分はワリエワだけではなく、ROCやロシア反ドーピング機関(RUSADA)にこそ向けられるべきだった。ROCが団体での失格を免れ、4位に据え置かれたカナダ・スケート連盟は「異議申し立ての、あらゆる選択肢を検討する」と述べている。
当時15歳だったワリエワが単独で禁止薬物を摂取したとは常識的に考えられず、コーチや医師の組織的関与を疑うのが自然だ。「心臓病の祖父と同じワイングラスで水を飲んだ」といった荒唐無稽な主張を受け入れて資格停止処分を解除したRUSADAの判断も異常だった。
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ロシアはソチ冬季五輪での組織的ドーピング違反や隠蔽(いんぺい)による制裁中で、北京では国際オリンピック委員会(IOC)から国旗、国歌の使用を禁じられ、選手はROC所属の個人資格で参加していた。団体種目への参加自体がおかしかった。
自国開催のソチ大会で、ロシア選手のドーピングは国家ぐるみと認定された。制裁期間中の北京でも問題を起こしたのだから、もっと厳正な処分が必要だったはずである。
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ロシア選手は原則的に、今夏のパリ五輪にも個人資格で参加する。ドーピング不正に加えてロシアは現在も隣国ウクライナを侵略中だ。ドーピングは公平や公正を前提とするスポーツの価値や選手の心身の健康を破壊するもので、侵略は平和の祭典をうたう五輪の理念を根底から覆す行為だ。IOCやCASの判断はロシアに甘すぎる。
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2024年2月5日付産経新聞【主張】を転載しています