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金融庁が、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の銀行と証券会社2社に対して、金融商品取引法に基づく業務改善命令を出した。
顧客企業の非公開情報を無断で共有していたためだ。これが銀行と証券の情報共有を制限する同法のファイアウオール規制に違反すると判断した。
国内最大手の金融グループにおけるコンプライアンス(法令順守)意識の希薄さとガバナンス(企業統治)体制の甘さにあきれるほかない。いずれも経営責任は重く、効果的な再発防止策を講じるべきは当然だ。
法令違反があったのは、三菱UFJ銀行と三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMUFG証券の3社だ。証券取引等監視委員会が金融庁に対して、行政処分を行うよう勧告していた。
持ち株会社のMUFGに対しては重い処分を見送り、銀行法に基づく報告徴求命令にとどめたが、グループ内の違反を許したことは重大だ。MUFGも責任を明確にすべきである。
三菱UFJ銀行は株式売り出しや企業買収など顧客企業の非公開情報を証券側に提供していた。銀行からの提供は少なくとも10回あり、銀行の専務執行役員が行ったものもあった。証券側はこれらを利用して契約勧誘などを行った。このほか顧客への融資条件として証券側との取引を抱き合わせで勧誘するといった、銀行に禁じられた業務を行う違反などもあった。
一連の違反には、銀行が有利な立場を利用して顧客企業に不当な取引を迫る「優越的地位の乱用」は認められなかったという。だが、情報管理のずさんさや順法意識の欠如は金融グループとしての信頼を大きく揺るがすものだ。グループ収益の拡大を目指す中で法令順守がないがしろにされたのなら、問題の根は深いといわざるを得ない。
銀行と証券の公正な競争環境を確保するためのファイアウオール規制は、国際的な競争力強化を訴える銀行界の要望で段階的に緩和されてきた。政府はさらなる規制緩和も検討しているようだ。一方で令和4年には三井住友フィナンシャルグループでも同様の規制違反が発覚するなど不適切な行動が相次いでいる。これでは規制緩和に疑義が生じかねないことを金融界は深刻に受け止めるべきである。
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2024年6月26日付産経新聞【主張】を転載しています