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A SpaceJet test aircraft takes off from Aichi Prefectural Nagoya Airport in March 2020 (provided by Mitsubishi Aircraft Corporation)

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三菱重工業が国産初のジェット旅客機「スペースジェット」の開発を断念し、事業から撤退することを決めた。

 

令和2年には開発を凍結していたが、今後も採算の確保は困難と判断した。「日の丸ジェット」として官民の期待が大きかっただけに、開発中止は極めて残念だ。

 

気候変動対策などで設計変更が相次ぎ、納入延期が6回も繰り返された。検査体制の不備などもあり、商用運航に必要な「型式証明」が取得できなかった。

 

開発事業には500億円の公費も投入されており、事業全体の徹底的な検証が不可欠である。そのうえで将来の国産旅客機開発の再開に向け、これからも官民で技術や知見の習得に努めてほしい。

 

SpaceJet
三菱重工業のスペースジェット最終組立工場=2月7日午後、愛知県豊山町(共同)

 

「スペースジェット」は15年前に事業化が決まったが、主翼など基幹部材を含めた設計変更が重なり、そのたびに開発が遅れた。開発の長期化で技術の優位性も失われ、事業費は当初の1500億円から1兆円規模に膨らんだ。

 

自前の技術を過信し、海外の先進技術を取り込むことに慎重すぎた。開発途中から外国人技術者を招いたが、社内技術者との連携が不足していた。事業化の遅れに伴って開発子会社の三菱航空機(愛知県)のトップが何度も交代し、混乱を広げたのも反省材料だ。

 

地域産業への打撃も大きい。航空機の部品点数は約100万に及び、関連産業の裾野が広い。このため、愛知県は航空機を次世代産業の柱に位置付け、地元企業の活性化につなげる計画だった。スペースジェットに代わる新たな産業の牽引(けんいん)役を早急に育てたい。

 

世界の航空機産業では、IT化の進展などで技術の進化も一段と速くなっている。このため、新型機の開発をめぐっては莫大(ばくだい)な開発費などのリスクを分散するため、国際共同開発が主流となっている。海外企業との連携が何よりも重要である。

 

日本の製造業にも重い課題を残した。高度な技術を必要とする大型開発事業では、開発現場に権限を与え、迅速な意思決定を図ることが欠かせない。一方で工程管理も徹底し、コスト膨張を防ぐ工夫も求められる。

 

今回は失敗に終わったが、将来の成長に向けて新規事業に挑戦する気概は持ち続けたい。企業が失敗を恐れるばかりでは、日本の稼ぐ力を高めることはできない。

 

 

2023年2月15日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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