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全国14都府県で相次いだ残虐な広域強盗事件などの指示役とみられる4人が、警視庁に逮捕された。事件の全貌はまだみえていない。高額所得者の独居老人など標的の選定や、奪った金品の流れなどに絡み、さらなる上位者や首謀者が存在する可能性もある。
社会の体感治安を極度に悪化させた凶悪事件である。指示役の調べで組織の全体像に徹底的に切り込み、同種事件の再発を防いでほしい。
マニラの入管施設内でパソコンやスマートフォンを使って広域強盗の実行犯に指示していたとみられる今村磨人容疑者ら2人は7日に、渡辺優樹容疑者ら2人は9日に強制送還された。
これを受けて警視庁は4人を、強盗とは別の特殊詐欺事件に絡む窃盗容疑で逮捕した。
警視庁はまず、逮捕容疑の捜査を進め、その後に広域強盗事件への関与を調べることになる。両事件の構図はほぼ同一で、ネットの闇サイトなどに応募してきた実行役に、海外から対象者や手口を指示していたとみられる。
末端の実行役が「オレオレ」などの特殊詐欺を働くか、手っ取り早く暴力に訴えて金品を強奪するかの違いがあるだけだ。
警察庁によると、昨年の特殊詐欺の被害額は8年ぶりに増加に転じたが、平成26年をピークに全体的には減少傾向にあった。警察の啓発活動などを通じて高齢者らがだまされにくくなっていることも、その要因に数えられる。
殺人もいとわぬ手口の凶暴化には、そうした背景もある。首謀者や指示役にとっては、金品が手に入ればどちらでもいいのだ。
また警察庁によれば、昨年の総検挙人員2469人のうち、中枢被疑者(首謀者)の検挙は48人で全体の1・9%に過ぎず、このうち16人が暴力団関係者だった。
この種の犯罪で、首謀者の摘発がいかに難しいかを物語る数字である。それでも、摘発者が犯罪グループの上位であればあるほど首謀者に近く、遡上(そじょう)する捜査に期待がかかる。
4容疑者には、マニラの収容所で証拠隠滅を謀議する時間が十分にあった。押収したパソコンなどのデータもほとんど消去されているだろう。復元には困難が予想される。それでも捜査当局には全容の解明に総力を挙げてほしい。この犯罪は到底許し難い。
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2023年2月10日付産経新聞【主張】を転載しています