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台湾の総統選挙で、民主進歩党の頼清徳副総統が、中国国民党の侯友宜新北市長と台湾民衆党の柯文哲前台北市長との三つ巴(どもえ)の戦いを制した。蔡英文総統から頼氏へと民進党政権が継続する。
共産党支配の中国は台湾併吞(へいどん)の圧力を強めている。台湾の人々が総統選を通じ、成熟した民主主義の姿を示した意義は極めて大きい。
新総統の任期は5月から2028年までの4年間だ。米政府要人らの間では、27年までに中国が台湾へ武力侵攻する可能性が懸念されている。
総統選では経済政策も争点となった。そうであっても、頼氏の最大の責務は、中国から台湾の自由と民主主義を守り抜くことである。
総統選では中国による露骨な世論工作があった。
里長と呼ばれる公選の町内会長を格安で中国へ呼ぶ接待ツアーが横行した。SNSでは与党民進党関係者を誹謗(ひぼう)する虚偽情報が拡散された。中国共産党福建省委員会関係者から指示を受け、偽の世論調査結果を流布したネットメディアの台湾の記者が拘束される事件もあった。
今月に入って台湾本島上空に中国の気球が飛来した。9日には事前通告なしに、衛星を搭載した中国のロケットが台湾本島上空を通過した。
中国は経済的脅迫もためらわない。昨年12月には台湾との協定に基づく関税優遇措置の一部停止を決めた。
中国は民主主義への介入、攻撃を恥じるべきで、二度と繰り返してはならない。5月の頼政権発足への嫌がらせも厳に慎むべきだ。
頼氏は自由と民主主義を守るために、中国の浸透工作摘発を進めるとともに、防衛力の充実によって対中抑止力の向上を急いでもらいたい。
民主主義も法の支配も遵奉(じゅんぽう)しない中国は、「力の信奉者」である。そのような専制主義の国と対話をする上でも、台湾海峡の平和と安定を守る上でも、抑止力の強化が欠かせない。
「台湾有事は日本有事」である。日本は自国の平和と繁栄を守るためにも、米国とともに台湾と連携していくべきだ。
日本は台湾を国家として承認していないが、外務・防衛当局による安全保障対話、半導体などをめぐる経済安保対話で、関係を深めるときである。
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2024年1月14日付産経新聞【主張】を転載しています