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米軍横田基地(東京都)常駐の垂直離着陸輸送機CV22オスプレイが鹿児島県・屋久島沖で墜落した。
乗員1人が救助されたが、死亡が確認された。国内でのオスプレイの事故で人が亡くなったのは初めてだ。
事故機は特殊部隊である米空軍第353特殊作戦航空団の所属で米軍岩国基地(山口県)から同嘉手納基地(沖縄県)に向かっていた。乗員は8人だった。日米両国や地域の平和を守るため訓練していた最中の事故である。殉職した乗員に哀悼の意を表したい。
自衛隊や海上保安庁などが残る乗員の捜索を続けている。救助に全力を尽くしてほしい。
木原稔防衛相が米軍に対し安全性を確認してからオスプレイの飛行を再開するよう求めたのは当然だ。在日米軍は事故後もオスプレイを飛行させたが、有事でもないのに問題である。
事故当時の天候は穏やかだったという。海中に没した機体を引き揚げるなどして原因を徹底的に究明してもらいたい。
オスプレイは、主翼の回転翼の角度を変えて飛行やホバリング、垂直離着陸をこなすことができる。米空軍のCV22、米海兵隊のMV22、陸上自衛隊が保有するV22などの型式があるが、エンジンなど基本構造に大きな違いはないとされる。
平成28年には米海兵隊のMV22が沖縄県名護市の沿岸に不時着して大破する事故があった。海外では8月、米海兵隊のMV22がオーストラリア北部メルビル島で訓練中に墜落し、乗員3人が死亡した。
他の軍用機と比べ、事故率が異常に高いとされているわけではないが、墜落が続いているのは事実である。オスプレイが利用する空港周辺の住民の不安を解消せねばならない。米軍は再発防止に万全を期すべきだ。
安全と両立させてもらいたいのは、自衛隊と米軍による日米同盟の抑止力確保である。オスプレイは軍用ヘリと比べ速度や航続距離で優れている。迅速な兵力展開が必要な南西諸島防衛で活用できる。松野博一官房長官が会見で陸自V22の佐賀空港(佐賀市)配備計画を変更しないと表明したのは妥当だ。
今回の事故の状況が詳(つまび)らかになるまで陸自V22の飛行は当面見合わせとなった。米軍は原因究明を急ぎ、自衛隊と情報を共有してもらいたい。
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米空軍は12月5日、鹿児島県・屋久島沖で輸送機CV22オスプレイが墜落した事故で、搭乗員8人全員の死亡を認定し、救助から遺体の収容に活動を移行したと発表した。米空軍特殊作戦司令部によると、行方不明となっている2人を含め搭乗員の生存が見込まれないため、活動を救助から遺体収容に移行した。米軍は機体の残骸回収も継続する。
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2023年12月1日付産経新聞【主張】を転載しています