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米政府や米軍の機密文書がインターネット上に流出した問題で、連邦捜査局(FBI)が20代の空軍州兵を逮捕した。
米国防総省高官は文書には高度な機密情報が含まれていると認めた。
同盟諸国の内部情報とされる記述も含まれていたことから、米国内だけでなく、同盟国にも波紋が広がった。
米メディアによると、州兵はIT技術者で機密情報を取り扱う国防総省のネットワークにアクセスできる権限を持っていた。
オースティン国防長官は、国防総省内の情報へのアクセス手続きの見直しなど、再発防止に向けた取り組みを行うと発表したが、早急に実行すべきだ。
流出した文書はロシアによるウクライナ侵略をめぐるものが多かった。米メディアによれば、内容はウクライナ軍の戦力や防空態勢、作戦計画などに関するもので、ウクライナは計画していた大規模な反攻作戦の一部変更を余儀なくされたという。米政府は一部の内容が改竄(かいざん)されているとも主張している。
今回の問題を機に米国とウクライナ間の情報共有に不協和音が生じ、ロシアとの戦闘の行方に悪影響が生じるようなことがあってはならない。
流出した文書から米国の情報収集活動の詳細が解析され、情報提供者に危害が及ぶ恐れもある。
漏洩(ろうえい)した機密には同盟国に関わるものもあった。
韓国大統領府高官の間のやり取りを米当局が通信傍受した記録とされる文書では、ウクライナに殺傷力のある武器を供与しない方針の韓国が、米国から韓国製弾薬をウクライナに送るよう要請されたことを懸念するやり取りが記載されていた。ウクライナと韓国は、自国に関わる記載内容について「偽情報」とする公式見解を表明した。
懸念されるのは、北大西洋条約機構(NATO)加盟国を中心とする民主主義陣営の結束に亀裂が生じることだ。日本などの同盟国が、米国の情報収集を過度に問題視して足並みを乱すことになれば、中露などの専制主義勢力を利する結果になりかねない。
バイデン米政権は、州兵の動機や背後関係への捜査と並行して、同盟諸国に対して、流出の経緯と対応策について説明を尽くす必要がある。
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2023年4月15日付産経新聞【主張】を転載しています