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長野県軽井沢町で開かれていた先進7カ国(G7)外相会合が「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持する」と初めて明記した共同声明を発表した。
台湾併吞(へいどん)をもくろむ中国とウクライナ侵略を続けるロシアを念頭に「力による現状変更」を認めないG7の意志を確認したもので評価できる。
共同声明が「台湾海峡の平和と安定の重要性」を改めて表明し、「G7の台湾に対する基本的立場に変更がない」と強調したのも妥当だ。
台湾問題をめぐっては、訪中したフランスのマクロン大統領が「欧州は米中いずれにも追従すべきではない」と述べてG7の結束に疑念が生じていた。
林芳正外相によれば、コロナ仏外相は「フランスは台湾海峡の平和と安定の維持に深い思いを持っている。力による一方的な現状変更に反対する」と述べた。コロナ氏は、訪中時にマクロン氏は同様の見解を習近平国家主席に伝えたと説明したという。ならば、マクロン氏は、5月のG7広島サミットで「台湾海峡の平和と安定」に向け、行動を示す姿勢を示さなければならない。
共同声明は、ロシアのウクライナ侵略を「可能な限り最も強い言葉で非難」し、ロシア軍の即時かつ無条件の撤退を要求した。ロシアへ武器を供給する第三者が現れるのを防ぐため行動することも盛り込んだ。
G7や欧州諸国が対露制裁を実施しても、中国などが、ロシアが物資や武器を調達する抜け道を用意しては、侵略によるウクライナの被害が増大していく。今後は、声明の内容をいかに行動で実現していくかが問われる。
今回の共同声明に対して、中国外務省は「台湾問題は中国の内政であり、いかなる外部の干渉も許さない」と反発した。だが、中国がとるべきは、台湾に対する武力行使の放棄を約束することだ。
共同声明は「我々の懸念を中国に直接表明することの重要性」に言及した。外相会合は「自由で開かれたインド太平洋」に関する議論の定例化で合意した。いずれも歓迎したい。
岸田文雄首相には広島サミットで、台湾を含むインド太平洋と欧州の安全保障は連動しており、平和実現へG7が結束して行動する重要性を確認してもらいたい。
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2023年4月19日付産経新聞【主張】を転載しています