インド太平洋経済枠組み(IPEF)の発足会合の冒頭、記念撮影に臨む
(左から)岸田文雄首相、バイデン米大統領、インドのモディ首相
=5月23日、東京都港区(川口良介撮影)
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クリントン米政権で商務省高官を務めた米戦略国際問題研究所(CSIS)のビル・ラインシュ氏が10日までに産経新聞の取材に応じ、バイデン米大統領が5月の訪日中に設立宣言した新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」について「主な規制の焦点はデジタル貿易となりそうだ」との見方を示した。
IPEFは①貿易②サプライチェーン(供給網)③クリーンエネルギー・脱炭素化・インフラ④税・腐敗防止-の4つの柱からなる米国主導の経済協力枠組み。バイデン氏は5月23日、東京都内で岸田文雄首相や訪日していたインドのモディ首相らとともに設立を宣言した。
ラインシュ氏は、IPEFの設立時の参加国が東南アジア諸国連合(ASEAN)7カ国を含む13カ国に上り、「素晴らしい始まりだ」と評価した。参加表明したインドは「自国の関税引き下げを求めていない」として、「IPEFに市場参入交渉がないことでより入りやすくなった」と分析。「『貿易』よりも、米商務省が主導するほかの3つのうちのどれかに加わるのではないか」との考えも示した。
一方、関税引き下げがないことは参加表明をしていない国々にとって「魅力を下げている」と解説。そうした点が「米国内で批判されている」と指摘した。
首相がバイデン氏に対し環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への復帰を呼びかけていることについては「日本政府が正しい」と強調。経済、軍事両面から影響力の拡大を図る中国を念頭に「米国ができる最善のことはTPP交渉に戻るか、11カ国で締結された環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)に参加することだ」とした。
ラインシュ氏は「日本は近年、インド太平洋地域の経済課題をめぐり指導力を発揮してきた」とし、「現政権でも指導的役割を果たし続けると楽観している」とした。
筆者:岡田美月(産経新聞)