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Semiconductor wafer (Wikimedia Commons)

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4月16日に米ワシントンで行われる日米首脳会談では、日米が半導体などのサプライチェーン(供給網)構築で協力することが確認される見通しだ。かつては世界トップの座にあった日本の半導体産業だが、2000年以降は韓国や台湾に押され後退してきた。日米が強みを持ち寄り、役割を分担することで、競争力が再び高まり、日の丸半導体復活ののろしとなる可能性がある。

 

日本の半導体産業は、特定の分野では今も高い地位を維持している。ソニーグループはCMOS(相補型金属酸化膜半導体)と呼ばれる画像センサーで世界シェアの約半分を握る。日本は電力制御に使うパワー半導体や、発光ダイオード(LED)などの光半導体でも高い技術を持つ。

 

素材でも、半導体の土台となるシリコンウエハーで信越化学工業やSUMCOが6割近いシェアを握る。ウエハー上に塗布するレジスト(感光材)ではJSRや東京応化工業が強い。製造装置でも、東京エレクトロンなどが高いシェアを持つ。

 

ただ、全体で見ると競争力低下は否めない。

 

日本の半導体産業が全盛期を迎えたのは1980年代。当時、日本の電機大手は世界の売り上げ上位10位以内の約半分を占めていた。だがパソコンの心臓部といえるCPU(中央演算処理装置)では米インテルの牙城を崩せず、韓国勢や台湾勢にも押されていった。

 

現在、世界の半導体産業をリードしているのは米国のクアルコムやエヌビディア、台湾積体電路製造(TSMC)や韓国サムスン電子だ。日本勢は10位以内に1社も入っておらず、12位にキオクシアホールディングスが顔を出す程度だ。

 

一方、米国の半導体産業は研究開発面ではトップの実力を持つが、生産面ではやはりTSMCやサムスンの後塵(こうじん)を拝している。そんな日米の連携には「巻き返すという共通目標がある」(日本の半導体メーカー幹部)。

 

日米連携による供給網強化は、台頭する中国への対抗や経済安全保障の確保にもつながる。

 

電気自動車(EV)に搭載する2次電池では、寧徳時代新能源科技(CATL)などの中国勢が急速にシェアを伸ばしている。中国はEV用モーターの磁石材料などに使うレアアース(希土類)でも生産の大半を握り、半導体でも着実に技術を積み上げている。

 

中国に調達網を支配されかねない状況を前に、14日には車載用電池に関連する日本の素材メーカーや自動車メーカーなど55社が、国内供給網整備を目指す新団体「電池サプライチェーン協議会」を立ち上げたばかり。日米連携はそうした動きを加速させ、幅広い分野で効果を発揮しそうだ。

 

筆者:井田通人(産経新聞経済本部)

 

 

2021年4月16日産経ニュース【経済インサイド】を転載しています

 

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