Comfort women

This comfort women statue was erected in front of the Japanese embassy in Seoul. (© Kyodo)

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戦前わが国は公娼制度を持っていた。慰安婦はそれを戦地に持ち込んだものだ。慰安婦となった女性たちは貧困の犠牲者だった。そのことは日本人も韓国人もみな知っていた。ところが1990年代初め日本の一部反日勢力が、日本軍が国家総動員法に基づく挺身(ていしん)隊として奴隷狩りのように朝鮮女性を連行し慰安婦にさせたという荒唐無稽な嘘を大々的に発信した。

 

 

嘘と戦う韓国の学者ら

 

激しい論争の結果、国内では権力による強制連行ではなく公娼制度の一環だったという見方が支配的になった。外務省も重い腰を上げて2019年から外交青書とホームページで強制連行、性奴隷、20万人という3つの嘘に反論を加え始めた。しかし韓国と国際社会にはまだ「朝鮮人の若い娘20万人が日本軍によって強制連行され、性奴隷となった」という嘘のイメージがはびこっている。わが国にとっての慰安婦問題とはこの嘘をどうやって打破するのかなのだ。

 

ついに、韓国でこの嘘と正面から戦う勇気ある学者、活動家が登場してきた。私は彼らを親日派ではなくアンチ反日派と呼ぶ。なぜなら、彼らは韓国の反日派の嘘と戦っているのであって、日本を擁護しているのではないからだ。

 

李栄薫前ソウル大教授が19年7月『反日種族主義』を出版して慰安婦は軍が管理した公娼であって性奴隷ではないと学術的な根拠を多数示しながら主張した。同書は韓国でベストセラーになった。

 

同年12月から毎週水曜日、ソウルの日本大使館前の路上では、慰安婦像を撤去せよ、慰安婦運動の水曜集会を中止せよというアンチ反日デモが「反日銅像真相究明共同対策委員会」によって行われている。日本大使館前では90年代初めから水曜集会と銘打つ反日デモが行われ、「少女像」という嘘の名前をつけた慰安婦像が不法設置されている。そのすぐ横で反対するデモを行っているのだ。

 

同委員会は私たち歴史認識問題に取り組む日本の有志と交流、連携を持っている。今年1月8日にソウル地裁が国際法を破って日本国に元慰安婦への賠償を命じる不当判決を下したとき、彼らは私を含む日本の有志学者、弁護士と「慰安婦判決に抗議する日韓共同声明」を出した。同委員会の共同代表を務める気鋭の韓国史学者・李宇衍氏は昨年12月、拙著『でっちあげの徴用工問題』を韓国語に訳して出版した。近く拙著『よくわかる慰安婦問題』を翻訳出版する準備を進めている。

 

 

米教授の学術論文も

 

最近韓国外交部代弁人が認めたように、強制連行説の「根拠」は元慰安婦らの証言とクマラスワミ報告などの国連調査しかない。証言については、すでに日本では私を含む研究者たちによって同じ人が矛盾する話をしていること、時代背景と合致しないなどが検証され、「根拠」として用いることができなくなった。韓国でも元慰安婦の証言に関する批判的検証が本格的に始まった。2018年4月、勇気あるジャーナリスト黄意元氏が元慰安婦の証言の変遷を検証する長文の記事を書いた(月刊「正論」昨年8月号に訳載)。

 

最近、国史教科書研究所長の金柄憲氏がその作業を精力的に進めて、韓国政府に対して「慰安婦被害者」指定を取り消せなどと要求する運動を進めている。彼らの検証によると、たとえば活発に日本批判を続けるある元慰安婦は名乗り出た直後「民間業者に赤いワンピースと革靴をもらい、うれしくてついていった」と言っていたが、その後、米国議会などでの証言で「日本軍人に脅かされて連れて行かれた」と語り始めたという。

 

米国の名門大学ハーバード大のラムザイヤー教授が、同大学が発行する学術雑誌に慰安婦が公娼であったことを前提にして業者と慰安婦の間の契約を分析した学術論文を寄稿した。産経新聞がその要旨を紹介したことが契機になって韓国で同論文に激しい非難が起きている。それに対して李栄薫、李宇衍、黄意元、金柄憲の各氏らが連名で声明を出し、韓国の論文非難は学術的討論を封じる魔女狩りだと批判し、「日本軍慰安婦性奴隷説が無誤謬(ごびゅう)の神聖不可侵領域になってはならない」と主張した。

 

 

ICJ提訴、真剣に検討を

 

韓国から激しい抗議を受けた同大の学長は、同論文は学問の自由の範囲の中にあると明言したが、学術誌編集部は同論文をネットから暫定的に下ろした。性奴隷説に反論を加えることが米国でも可能になるかどうか微妙な状況だ。

 

このような中、元慰安婦が記者会見を開いた。韓国内の自分の証言への批判には「相手にする価値がない」などと言って答えず、韓国政府に慰安婦問題を国際司法裁判所(ICJ)に持ち込むことを求めた。韓国と国際社会で嘘への批判が出てきているのだから、わが国も慰安婦に関する嘘を払拭する手段としてICJへの提訴を真剣に検討すべきではないだろうか。官民が力を合わせ、ICJで歴史的事実に踏み込んで嘘に対して徹底的に反論すれば、国際社会の嘘を支える国連報告書などを論破する良い機会になり得る。

 

筆者:西岡力(モラロジー研究所教授、麗澤大学客員教授)

 

 

2021年3月1日付産経新聞【正論】を転載しています

 

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