wartime labor

A public forum was held in Seoul on January 12 to discuss solutions to the so-called forced labor lawsuit. (© Kyodo)

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戦時中の朝鮮人労働者による損害賠償請求訴訟で、被告とされた日本企業の支払いを韓国行政安全省傘下の公益法人「日帝強制動員被害者支援財団」が肩代わりするという案が今月、韓国側から発表された。

 

肩代わりの方法として「併存的債務引き受け」という形が提示されているが、結局は日本企業に債務があることを前提としており、肩代わりのための「契約」を企業が財団と結ぶ必要があるという。目の前の懸案解決を急ぐあまり、日本側がありもしない「責任」を認めることになるのではないかと憂慮する。

 

 

頑迷な韓国の被害者意識

 

よく知られるように、問題の発端は2018 年、韓国大法院(最高裁)が新日鉄住金(現日本製鉄)と三菱重工業に対して、原告の元労働者への賠償支払いを命じる判決を下したことだ。賠償の原資として、両企業の現地資産が売却されかねない事態に至った。日本側は、1965年の日韓請求権協定により戦時労働者の問題は解決済みであって、個人に対する補償は韓国政府の責任で行うべきであるとの立場から、大法院判決も資産売却も当然受け入れていない。

 

今回の肩代わり案に対しても、日本側は従来通りの姿勢を堅持すべきである。そもそも大法院判決や、それを前提にした解決案は、日韓両国を縛る国際法である請求権協定を無視しているのだから、この先も日韓の主張は平行線をたどると思われる。

 

韓国内には1910年の日韓併合条約が無効だという意見さえある。大韓帝国皇帝が署名した重大な約束を無効と主張し、日本による35年間の統治があったという現実さえ無視しようとするのだから、どんな取り決めをしても反故にされる可能性があるということだ。

 

財団の肩代わり案が発表された討論会は「強制徴用、解決方法を論議するための公開討論会」という名称である。「強制徴用」という言葉は少なくとも終戦直後から南朝鮮で使われている。戦時中、内地人(日本人)も徴用の義務があったのだから、朝鮮人だけが徴用されたわけではない。

 

この言葉に象徴されるように、背景には頑迷な被害者意識が存在することを忘れてはならない。

 

wartime labor
1月30日、日韓外務省局長協議が開かれたソウルの外務省前で、いわゆる徴用工問題への韓国政府の解決案に「屈辱的」と抗議する市民団体(共同)

 

「戦時労働者」解決効果は期限付き

 

朝鮮半島情勢が緊迫度を増している中、日韓関係改善は歓迎すべきことではある。だが、解決を優先して日本側があるはずのない責任を引き受けたとしても、その効果は期限付きだろう。交渉に14年もの歳月をかけた日韓請求権協定さえ、時がたてば無視されるのが現実である。

 

この問題で何らかの打開策は探るとしても、日本側は原則を守り、いわれのない責任を負うべきではない。

 

筆者:荒木信子(国基研企画委員)

 

 

国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第1003回(2023年1月23日)を転載しています

 

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