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国税庁が7月1日に発表した路線価で、上昇率の全国トップは長野県白馬村の「村道和田野線」(同村北城)だった。割安のスキーリゾート地として海外投資家から注目され、路線価は1平方メートルあたり3万7千円で昨年から32・1%上昇した。一部の住民からは、外資主導の開発後にオーバーツーリズム(観光公害)に悩む北海道のニセコ地区を念頭に「『第2のニセコ』にしてはならない」と危惧する声も上がる。
「夏でもSNSで話題」
北アルプスを臨むJR白馬駅から車を10分走らせると、木々に囲まれた村道和田野線の入り口に続く。通りには高級ホテルやペンションが軒を連ねている。
駅からほど近いスキー場「白馬岩岳マウンテンリゾート」は近年、夏も観光客でにぎわう。
北アルプスに飛び込むような感覚を味わえるブランコや、山々を一望できるテラスが人気といい、京都から訪れた女性(22)は「都会にはない広大な自然を感じられる。今の白馬は夏でもSNSで話題だ」と興奮気味に話す。
同施設の広報担当は「季節にとらわれず、ファンを獲得することが重要だ」と力を込める。
冬場のスキー客、約5割が外国人
白馬村の地価高騰を支えるのは、こうした国内外資本による再開発だ。
白馬村は東京や京都から近い上に良質な雪を楽しめるスキーリゾートとして再評価が進む。冬場のスキー客の約5割を外国人が占めており、訪日客増加を見越した外資系の進出が相次いでいる。
平成30年には米マリオット・インターナショナルが白馬村初の外資ブランドホテルをオープン。令和8年以降には国内でホテル運営を手掛けるウェルス・マネジメントが外資系と組み、シンガポールを拠点とする海外の高級ホテルブランド「バンヤンツリー」を白馬村にある国内最大級のスキー場周辺に開業予定だ。
地元の不動産関係者は「白馬村はまだ割安感が強い。円安や海外資本の流入で今後も路線価は上昇傾向が続くだろう」との見方を示す。
物価上昇?騒音トラブルも
一方、こうした状況に危機感を募らせる地元住民もいる。
白馬村に住む50代女性は「(地元の)レストランの価格が徐々に上がってきている」と証言。白馬村でホテルを経営する鈴木幸一さん(74)は「スキー場近くでは外国人の騒音トラブルやごみのポイ捨てなどが目立ってきた」と嘆く。
同じく海外資本も入って再開発が進んだ北海道のニセコ地区では、周辺の物価の上昇など、オーバーツーリズムによる弊害も指摘されている。
白馬村建設課の担当者は「『第2のニセコ』にならないよう土地の開発規模に規制を設け、住民説明会の実施も義務付けている」としている。
筆者:久原昂也(産経新聞)