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岸田文雄首相とガーナのアクフォアド大統領との会談のテーマの一つとなったのが保健・医療分野での協力の確認だ。広島市で5月19日から始まる先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)ではアフリカなど新興国・途上国への医療支援や、誰もが適切な医療を受けることができる「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」が重要課題の一つとなる。首相はガーナへの支援を通じ、議論の活性化を図りたい考えだ。
「野口英世博士のレガシー(遺産)をもとに、両国の保健分野での協力はますます強化されている」
首相は、1日のアクフォアド氏らガーナ政府高官との晩餐会でこう述べ、ガーナの風土病となっているマラリアなどの感染症対策で今後も貢献する考えを示した。
医療を通じた日本とガーナの接点をつくったのは細菌学者だった野口だ。野口は1927年に黄熱病の研究のため、ガーナにわたり、翌年に黄熱病に感染して亡くなった。
この縁がきっかけとなり、日本はガーナを対象に医療支援を続けてきた。首都のアクラには日本の支援で野口の名前にちなんだ「野口記念医学研究所」(野口研)があり、新型コロナウイルス禍では、PCR検査の拠点などとしてガーナのみならず、西アフリカの医療を支えた。首相もアクフォアド氏との会談に先立ち、野口研を視察した。
首相は、サミットを契機にUHCの推進を目指している。4月に開かれた地球規模の課題をテーマとした国際会議では「国際社会は複合的な地球規模課題に直面している。最も重要なものの一つがグローバルヘルスの取り組みであり、UHCの達成だ」と訴えた。
国民皆保険制度が定着する日本は、国際的にUHCをリードする立場でもある。日本はこれまでもガーナをUHCの推進国として医療支援を続けてきたが、アクフォアド氏との会談でも協力を改めて確認した。
中国やロシアもアフリカへの働きかけを強めている。新型コロナ禍では、中国がアフリカでの「ワクチン外交」を展開し、影響力の拡大を狙ったが、中国製ワクチンは品質面で課題があるとされた。一方、日本はこれまでも野口研などを通じ質の高い医療支援を行ってきた実績がある。国際秩序の維持に向けたアフリカとの連携強化に向けても、地域の実情に合わせた地道な取り組みを続けることが鍵になりそうだ。
筆者:永原慎吾(産経新聞)