Foreign Tourist 20221116 Osaka

The streets of the "Minami" area in Chuo-ku, Osaka City on November 16, 2022. (© Sankei by Yui Sutani)

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「SNSでジェンダー問題発信 声上げる女性へやまぬ攻撃 ゆがむ日本」。毎日新聞が1月16日に配信した記事の見出しだ。記事は立憲民主党の元衆院議員・尾辻かな子氏が昨年11月、JR大阪駅構内に貼られた広告について「2022年の日本、女性の性的なイラストが堂々と駅出口で広告になるのか…」とツイートしたところ多くの反響があり、中には尾辻氏への脅迫も含まれていたことに触れ、「日本社会のゆがんだジェンダー意識」と批判する。

 

しかしこの批判はおかしい。ゆがんでいるのは尾辻氏を脅迫した特定の個人であり、日本人全員でも日本という国家でもない。反響の中には尾辻氏に同調する声もあったと記事にはある。にもかかわらず、尾辻氏を脅迫する一部の人間の愚行を日本の象徴であるかのように描写するのは、明らかに曲解だ。

 

記事は、バニーガール姿などの漫画のキャラクターを描いた広告を「性的なイラスト」と断定する尾辻氏に同調している。しかしこれはそもそも「性的なイラスト」なのか。誰にそれを判断する権利があるのか、その根拠は何か。これは本当に大阪駅構内に貼られてはならないのか、どこならばよくてどこならばダメなのか等々、本質的かつ多面的に議論の余地のある問題であるはずだ。

 

声を上げる女性だけが攻撃されているかのような見出しも客観性に欠ける。尾辻氏が女性であるという事実と、尾辻氏が攻撃されたという事実の間の因果関係は証明されていない。

 

記事終盤には、「世界経済フォーラムが公表した22年版の男女格差(ジェンダーギャップ)に関する報告で、日本は146カ国中116位と下位に沈む。声を上げる女性に対する攻撃は、その現在地を表しているように思う」とある。だが男女格差を評価する国際的指数は記事で指摘されたジェンダーギャップ指数(GGI)だけではない。国連開発計画が22年に公表したジェンダー不平等指数(GII)では、日本は191カ国中22位とかなりの高位置を占めている。記者はなぜGIIではなくGGIだけをとりあげ、それこそが日本の「現在地」だと「思う」のか。

 

この記事は、「日本は女性を差別する悪い国」という記者自身の思い込みを補強するのに都合のいいデータだけを選び、恣意(しい)的に継ぎはぎしたようにみえる。最後の一文もそう考えれば納得できよう。「女性の生きづらさを軽減しようと声を上げる人たちの勇気が暴言でくじかれることがないよう、私も取材を続けたい」

 

筆者:飯山陽(イスラム思想研究者・麗澤大学客員教授)

 

イスラム思想研究者の飯山陽氏 =2021年8月24日、東京・大手町 (寺河内美奈撮影)

 

2023年2月12日付産経新聞【新聞に喝!】を転載しています

 

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