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「大正浪漫」を象徴する画家であり、詩人でもあった竹久夢二。その生涯をたどる巡回展「生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界」が、東京都港区の東京都庭園美術館で開幕した。
新発見の大正中期の名画《アマリリス》、滞米中に描かれた貴重な油彩画《西海岸の裸婦》、そして夢二を看取った友人に遺した外遊スケッチなど、初公開資料を含む約180点の作品を夢二郷土美術館コレクションを中心に紹介する。
〝近代画家夢二〟を再発見
没後90年を迎え、今なお愛される竹久夢二。東京展の会場となる東京都庭園美術館をはじめ、全国の美術館で巡回を予定しています。これまで多くの展覧会が開かれてきましたが、夢二の故郷にある夢二郷土美術館のコレクションを、美術館でこれほどの規模で回顧する機会はおそらく初めてでしょう。単なる流行作家、グラフィックデザイナーではなく、1人の近代画家として見つめなおす場になると思います。
その試みのひとつとして、新発見の名作《アマリリス》をはじめ、夢二が滞米中に手がけた野心作《西海岸の裸婦》など、油彩に重きを置いた構成になっています。夢二の現在所在が確認できる油彩は約30点と少なく、今回はそのうち約半数が出展される貴重な機会です。
夢二は正規の美術教育を受けることなく、独学で唯一無二の画風を築き上げました。油彩には特にその個性が強く表れていると感じます。近代、日本人の画家にとって「日本らしい洋画」の追求は長年の命題でした。当時、ヨーロッパに留学したエリート画家らはその問いを突きつけられ、悩んできました。しかし夢二はいとも簡単に「日本らしい洋画」の解を導き出したのです。《アマリリス》にみられるような独特のロマンティシズム、情感はまさに夢二ならでは、日本ならではの表現だと思います。
絵画を通じて、夢二は大正という時代を創り上げていきました。当時はまだ封建社会が残っていましたが、夢二は自由と美、そしてロマンによってものすごく大きな影響を社会に与えたのです。日本が軍国主義へと向かう中、夢二はキリスト教や社会主義に関心を寄せ、女性や子どもといった当時の社会的弱者にやさしいまなざしを向けました。夢二が創り上げた時代はまさにベル・エポック、美しきよき時代であったといえるでしょう。
カワイイ文化の先駆者
夢二の先駆的な表現は、世界で活躍する日本のデザイン、〝カワイイ文化〟の原型でもあります。最近では、オランダをはじめ海外でも夢二の展覧会が開催され、国際的に研究が進んでいます。そうした意味では、夢二は今もわれわれの社会に影響を与え続けているといえます。
画家としてか、マルチアーティストとしてか。かわいさか、あるいは切なさややるせなさか。多才さゆえにさまざまな表情を持つ夢二が、令和の若い世代にどのように受け入れられるのか。それがこの先の社会の在り方を占うような気もしていて、楽しみです。社会に迎合することなく、厳しい孤高の道を歩み、独創的な表現にたどり着いた夢二。その芸術性に敬意を払って、作品に改めて向きあう場となればと思います。
(談=本展監修・岡部昌幸帝京大学名誉教授/群馬県立近代美術館特別館長)
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ジャケ買い必至!こだわりの図録とグッズが登場!
図録は単体(2900円)と箱入り(4500円)。箱入りは「桜草」「若草」「青い小径」「猫」の全4種から選べます。どれもジャケ買いしたくなるかわいらしさです。箱入りの付録であるレターブックは、両面すべて異なる絵柄の便箋が24枚セット。
パレスホテル東京とコラボした「千代ちょこ」6枚入り(4200円)は、夢二による千代紙や雑誌の表紙絵をデザインした厚さ約2㍉の芸術的なチョコレート。繊細な口どけと香りを楽しめます。
また、懐かしく新しい!と人気のガラス食器シリーズ「アデリアレトロ」ともコラボ。「ゾンビーグラス」2個セット(3000円)には、《千代紙「桜草」》をあしらいました。
東京展の会場となる東京都庭園美術館の本館は、1933(昭和8)年に皇族朝香宮家の自邸として建てられました。アール・デコ様式の優美な内装で知られ、国の重要文化財にも指定されています。夢二と同時代の空気を残す邸宅空間でその作品世界を味わえます。
贅沢な一夜を…「ぴあプレミナムナイト」開催決定
6月29日夜には200人限定でこの空間を堪能できる「ぴあプレミアムナイト」を開催。監修者の岡部昌幸氏のギャラリートークと箱入り図録もついた贅沢なひとときをお楽しみください。詳細・申し込みは「ぴあ」特設ページまで。
■開催概要
- 展覧会名:生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界
- 会期:6月1日(土)~8月25日(日)
※月曜休館。ただし7月15日(月・祝)、8月12日(月・祝)は開館。7月16日(火)、8月13日(火)は休館。 - 開館時間:午前10時~午後6時(入館は閉館30分前まで)
- 会場:東京都庭園美術館(東京都港区白金台5-21-9)
- 主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都庭園美術館、産経新聞社
- 観覧料(税込):一般=1400円/大学生(専修・各種専門学校含む)=1120円/中・高校生=700円/65歳以上=700円
※小学生以下および都内在住・在学の中学生は無料
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその介護者2名は無料 ※教育活動として教師が引率する都内の小・中・高校生および教師は無料(要事前申請) ※第3水曜日(シルバーデー)は65歳以上の方は無料
※ドレスコード割引(着物・浴衣でご来館)の方は100円引き。詳細は展覧会ホームページをご覧ください。 - 監修:岡部昌幸(帝京大学名誉教授・群馬県立近代美術館特別館長)
- 特別協力:公益財団法人両備文化振興財団 夢二郷土美術館
- 協力:竹久夢二学会
- 協賛:JR東日本
- 展覧会ホームページ:https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/240601-0825_yumeji/
■巡回展情報
- 《岡山》夢二郷土美術館 会期:9月7日(土)~12月8日(日)
- 《大阪》あべのハルカス美術館 会期:2025年1月18日(土)~3月16日(日)
- このほか富山・大分など全国6館を巡回予定。