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政府は、「佐渡島の金山」(新潟県)を令和5年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産登録することを断念した。政府が提出した推薦書の記載に不備があるとユネスコ側から指摘されたためだ。
一度提出した推薦書は修正が認められず、当初目指していた5年の登録はできなくなった。政府は不手際を厳しく反省し、登録を確実に実現してもらいたい。
文化庁によると、不備を指摘されたのは2月末だ。金山を構成する「西三川砂金山」の水路跡が途切れている理由の記述が不足していたという。だが、こうした経緯について、地元が国から知らされたのは7月下旬だった。
韓国は佐渡金山で朝鮮半島出身者が強制労働させられたという事実に反する主張をして、登録に反発してきた。昭和15~17年に半島出身者約1千人が佐渡金山で働いていたが、給与も支払われており、韓国の主張は不当な言いがかりだ。政府は令和3年に、「徴用による労務は強制労働には該当しない」との答弁書を閣議決定している。
世界文化遺産の登録審査は通常、推薦書の提出期限前年の9月末までに暫定版を任意で提出する。ユネスコから不備などの指摘があれば修正し、2月1日までに正式な推薦書を提出する。
ただ、政府が推薦を決めたのは昨年末で、今年2月の提出に向けた暫定版は出せなかった。韓国の反対を理由にして、日本側が推薦をためらって準備不足になったのであれば問題である。
気になるのは、ユネスコの指摘が登録に反対する韓国の影響を受けた面がなかったかどうかだ。
文化庁は、推薦書の不備を指摘したユネスコの意向と日韓対立とは無関係としている。だが、ユネスコは、歴史問題が世界遺産委員会に持ち込まれることを懸念しているとの指摘もある。
来年秋には韓国が世界遺産委員会のメンバーになる見方もある。そうなれば登録阻止に向け、宣伝戦を仕掛けてくる事態も予想される。政府は韓国に毅然(きぜん)と反論し、国際社会の理解を求めていかなければならない。
政府は来年2月に推薦書を再提出する方針だ。登録は早くても2年後となる。政府は今回の失態の原因を検証し、推薦書の再提出に万全を期してもらいたい。
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2022年8月19日付産経新聞【主張】を転載しています