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イラン内務省が6月28日に行われる大統領選の最終候補者6人を発表した。
米欧と対立する保守強硬派が5人、改革派が1人だ。国際協調を重視する穏健派の実力者らは資格審査で失格となった。
資格審査は、最高指導者ハメネイ師の影響下にある護憲評議会が行った。強硬派が優位となる構図を固める思惑がうかがえる。公正、公平な選挙とは程遠い姿で、国内外から批判を浴びたのは当然だ。
イランは内憂外患の状況にある。デモ弾圧や経済の疲弊で国民の不満は鬱積している。パレスチナ自治区ガザでは、イスラム原理主義組織ハマスとイスラエルの戦闘が続く。ハマスの後ろ盾であるイランは、イスラエルとの対立を深めている。
今回の選挙はライシ大統領の事故死に伴うもので、80人が立候補手続きを行った。
保守強硬派からは、ガリバフ国会議長が出馬する。体制を支える革命防衛隊出身だ。当選すればライシ師の保守強硬路線が続く見通しだ。
イラン核問題を巡る交渉で、米欧への妥協を拒否したジャリリ最高安全保障委員会元事務局長らも資格を得た。
一方、ラリジャニ前国会議長、ジャハンギリ前第1副大統領ら保守穏健派の複数の有力者が失格となった。改革派からはペゼシュキアン元保健相が資格を得たが知名度不足は否めず、穏健、改革派勢力の結集は困難とみられている。
イランは2021年の大統領選挙や今年3月の議会選挙でも、資格審査で穏健派らを露骨に排除した。国民からは「茶番」の声があがり、両選挙とも投票率が40%台と歴史的な低さとなった。将来に失望し、国を去る若者も多い。指導部はこれを直視すべきである。
強硬派が当選すれば、イランの核武装への懸念が高まる。国際原子力機関(IAEA)は5日、未申告の施設からウラン粒子が検知された問題に関して「専門的に信頼できる説明」をイランに要求した。
イランは核兵器級の90%に近づく、60%に濃縮したウランを保有する。核合意の重大な違反にあたり、イスラエルなどは警戒を強めている。新政権は、核合意再建に向けた米国との間接協議を再開し、国際社会の懸念を払拭してもらいたい。
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2024年6月13日付産経新聞【主張】を転載しています