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国のエネルギー政策の指針である「エネルギー基本計画」の見直しに向けた議論が始まった。令和22(2040)年度の電源構成などを検討し、今年度中に改定する。
ロシアによるウクライナ侵略でエネルギー情勢は一変し、エネルギー安全保障の重要性は一段と高まっている。次期計画では脱炭素とともに、低廉で安定したエネルギー供給を両立する戦略を描く必要がある。
そのために必要になるのは原発の活用拡大である。
岸田文雄政権は4年12月にまとめた「GX(グリーントランスフォーメーション)基本方針」で原発を最大限活用する方針に転換した。生成AI(人工知能)の普及などによって今後、増大が見込まれる電力需要に対し、原発は大量の電気を安定的に供給できる。
現行計画では12年度の電源構成のうち原発は20~22%としているが、4年度の実績は5・6%にとどまっている。
活用拡大には、新規制基準に合格した原発を着実に再稼働するとともに、原発の建て替えや新増設が欠かせない。政府は次期計画でそうした方針を明確に示し、実現に向け率先して取り組んでもらいたい。
脱炭素を進めるため、再生可能エネルギーの導入拡大も論点となる。だが、天候に左右される再エネを増やせば、電力供給は不安定化が避けられない。立地を巡り地元住民とのトラブルも増えている。蓄電池や送配電網の整備といった課題解決の手段も並行して議論しなければならない。
大量のCO2を排出する石炭火力発電の是非も重要なテーマだ。先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合でCO2の排出削減対策を講じていない石炭火力を17年までに廃止することで合意したが、日本は4年度で30%超の電気を石炭火力で賄っている。
日本は燃やしてもCO2を排出しないアンモニアを石炭に混ぜて燃やす技術開発を進めている。軌道に乗れば、石炭火力の割合が高いアジアの脱炭素にも貢献できるはずだ。
政府は22年に向けた脱炭素化と産業政策の方向性を盛り込んだ新戦略を年内に策定する。次期エネルギー計画に沿う形で企業の投資を支援し、国内産業の競争力強化につなげたい。
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2024年5月20日付産経新聞【主張】を転載しています