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政府が、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけを季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げる方向で検討している。岸田文雄首相と関係閣僚が協議する。
新型コロナは現在、結核やSARS(重症急性呼吸器症候群)など危険度の高い「2類」に相当する扱いだ。重症化率や致死率が下がり、対処方針も確立されてきた中で、この位置づけを見直す方向性は妥当である。
だが、一気に規制を緩和して感染爆発につながった中国の二の舞いを演じるわけにはいかない。日本のコロナ対策には、考慮すべき多くのことがある。
第8波では、感染者の多さから死亡が1カ月余りで1万人を超えた。感染力の強いオミクロン株の派生型「XBB・1・5」の拡大も懸念される。位置づけ変更で感染や死亡が増える恐れはないか。政府はその見通しを示し、どう対応するかを明確にすべきだ。
5類にすれば、都道府県が患者に入院を勧告したり外出自粛を要請したりする根拠はなくなる。公費で賄われている窓口負担が自己負担になることも想定される。それが混乱を招かぬよう段階的な移行が欠かせない。
重症者が受ける医療には高額な治療や薬剤もあり公費負担を続ける必要があろう。軽症者に処方される解熱鎮痛剤やせき止めなどとは分けて考えるべきだ。
病床が不足したときの入退院調整のため保健所の関与は引き続き重要である。必要な人が適切に入院できるよう万全を期したい。
5類になっても、コロナ対応の医療機関が急に増えるわけではないとの見方もあるが、これではいけない。政府は患者を受け入れる医療機関の大幅拡充に向けて指導力を発揮すべきだ。軽症者の治療薬も承認された。医療機関の対応を強く促す必要がある。
ワクチン接種が全て自己負担というのは非現実的だ。オミクロン対応の接種は無償なのに十分に広がっていない。当面は自己負担なく接種できる態勢を保ちたい。
屋内のマスク着用を原則不要とすることも検討されているようだが、いつでもどこでも外していいわけではあるまい。正確で丁寧な情報発信が求められる。
感染症法上の位置づけを変更しても新型コロナがなくなるわけではない。水際措置は常に迅速、厳格に行うべきである。
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2023年1月20日付産経新聞【主張】を転載しています