ワクチン接種推進担当相を辞任した堀内詔子氏(左)との
事務引き継ぎ式に臨む松野博一官房長官
=4月1日午前、首相官邸(矢島康弘撮影)
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新型コロナウイルスの感染が全国的に増加に転じている。
直近7日間を平均した新規感染者数は昨年夏のピーク時よりも多く、37都道府県で前の週を上回った。第7波の入り口にならないよう警戒を強める必要がある。
20代の若い世代が飲食店などで感染するケースが多いという。第6波を招いたオミクロン株の「BA・1」よりも感染力が強い「BA・2」への置き換わりが進んでいる。厚生労働省に助言する専門家組織の脇田隆字座長は警戒を呼び掛けた。
リバウンドを抑え、コロナ対策と日常生活の両立を図らなければならない。
3回目のワクチン接種は重症化や入院を防ぐ効果を期待できる。接種率は高齢者では8割を超えたが、全体では4割程度だ。政府と自治体は住民に丁寧に説明し、接種率向上に努めてほしい。
3月末の閣僚枠の減少に伴って、岸田文雄首相は堀内詔子ワクチン担当相を退任させ、松野博一官房長官に兼務させる。
職務多忙な官房長官が兼務して大丈夫なのか。4回目の追加接種が始まっている国もある。
政府は3回目接種の推進とともに、さらなる接種についても国民に分かりやすく説明していくべきである。
現役世代の重症化は、オミクロン株では比較的少ない。通常の生活を取り戻していくためにも、高齢者を感染から守るためにも、日々の感染対策を徹底したい。
それに加えて、病床逼迫(ひっぱく)を防ぐことは最も重要だ。
第6波では高齢者の重症化が目立った。高齢者の3回目接種は進んだが、適切な療養環境を準備することは欠かせない。
感染症への対応が得意な急性期の大病院に高齢者が長期間入院し続けると、コロナ感染症は治っても身体や認知の機能が低下し、元の生活に戻ることは難しくなってしまう。
リハビリと介護の機能がある中小病院の病床を高齢者向けコロナ病床に転換するのも一案だ。大規模な宿泊療養施設にリハビリと介護の機能を付すのも有効だ。
高齢者対応を進め、社会全体の厳しい行動抑制を避けるようにしたい。大病院の重症者用病床が高齢者の長期入院で埋まり、コロナ以外の救急医療が逼迫する事態も避けられるはずだ。
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2022年4月1日付産経新聞【主張】を転載しています