25日から国賓として来日するトランプ米大統領は、北朝鮮による拉致被害者家族と面会する見通しだ。拉致被害者全員の帰国実現に向けて、トランプ氏の力に期待するところは大きい。
拉致被害者、横田めぐみさんの母、早紀江さんは「拉致は世界が手を携えて解決する事件。被害者全員の即時帰国の願いを改めて伝えたい」と話した。
トランプ氏はこれまでも、拉致問題に深い理解を示してきた。平成29年11月の来日時も家族会と面会し、「安倍(晋三)首相と力を合わせ、母国に戻れるよう尽力したい」と約束していた。
2月、ベトナムのハノイで行われた2回目の米朝首脳会談では、トランプ氏が金正恩朝鮮労働党委員長に対し、拉致問題への取り組みについて「顕著な進展をみせていない」と迫り、金委員長が言い逃れを繰り返す緊迫した場面があったのだという。
この結果、金委員長は日朝間の課題に「拉致問題」があるとの認識を示し、安倍首相と「会う用意がある」とも表明した。安倍首相が日朝首脳会談を無条件で開催する方針を表明したのは、こうした背景によるとみられる。
強大な軍事力を持つ同盟国の協力は心強い。幸い拉致問題に理解を示すトランプ氏は安倍首相と強い絆を持ち、金委員長とも直接会談のチャンネルを保持している。拉致の解決へ向けては、あらゆる手段を講じるべきだ。そして最後は、日本政府の手で被害者全員を救わなくてはならない。
拉致は、北朝鮮の国家機関が当時13歳の横田さんを含む日本の無辜(むこ)の人々をさらい、自国に連れ去った残酷な凶悪事件である。金委員長の父、金正日国防委員長が拉致を認めて謝罪したが、多くの被害者が帰国を果たせぬままだ。
拉致問題をめぐっては今月、国連人権理事会の作業部会が日本人を含む外国人被害者の即時帰還などの具体的行動を求める勧告を採択した。だが北朝鮮側は「解決済み」とする従来の立場に固執し、勧告の拒否を宣言している。
北朝鮮は、拉致問題を解決しない限り自国の未来を描くことができない。この明白な事実を金委員長に理解させなくては事態は動かない。日米の強い連携こそがこれを可能にする。トランプ氏の来日をその好機ととらえ、拉致解決の重要性を発信してほしい。