Paris Olympics Eiffel Tower June 26 Kyodo rs

Trocadero Gardens, the final stage of the Paris Olympics opening ceremony, was opened to the press on the June 26 in Paris (©Kyodo) 

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パリ・オリンピックは7月26日、セーヌ川で開会する。

 

五輪が平和とスポーツの祭典であるなら、その価値や公平・公正性を大きく毀損(きそん)する阻害要因は侵略戦争とドーピングである。大会まで1カ月に迫ったこの時期に至っても、国際オリンピック委員会(IOC)の態度は煮え切らない。

 

IOCは、ウクライナに侵攻するロシアに国としてのパリ五輪参加を認めていない。だが6月15日、国旗や国歌を使用しない個人の中立選手として、重量挙げやレスリングなどのロシア選手14人の参加を承認した。これは第1段階とされ、今後も個人参加の選手は増える見通しだ。

 

IOCのバッハ会長(松井英幸撮影)

 

IOCは参加の可否を判断する資格審査委員会を設置しており、侵攻を積極的に支持する選手や軍、治安当局の選手を参加させないとしているが、その線引きはあいまいなままだ。

 

3年前の東京五輪でもロシアは組織的ドーピング問題から国としての参加を禁じられたが、中立選手は帰国後、国旗が乱舞する歓迎式典に迎えられた。2年前の北京冬季五輪後も同様の光景が繰り返され、直後にプーチン大統領はウクライナ派兵命令のテレビ演説を行った。

 

ロシアの選手たちは 、北京冬季五輪ではロシア・オリンピック委員会の旗の下に参加した=2022年2月4日(桐原正道撮影)

 

そもそもロシアは昨年11月、国連総会で採択された五輪休戦決議をシリアとともに棄権している。五輪の大義に賛同できないなら、決議ではなく大会を棄権すべきだった。

 

ロシアは2008年、北京五輪開幕当日にジョージアに侵攻し、14年のソチ冬季五輪閉幕直後にクリミア半島に侵攻した。休戦決議を無視する五輪への愚弄をこれほど繰り返してきた国はない。IOCの弱腰がこれを助長してきたともいえる。

 

中国競泳の23選手がドーピング検査で陽性となりながら東京五輪への出場が認められた問題では、米下院の中国特別委員会が米司法当局と連邦捜査局(FBI)に捜査を求め、IOCにも対応を求めている。

 

検出された心臓病治療薬「トリメタジジン」の服用ではロシアのフィギュアスケート選手、ワリエワが資格停止となった。23人という大量の陽性反応は異常であり、IOCと世界反ドーピング機関(WADA)には明確な説明が求められる。

 

戦争と薬物を排す覚悟がみられない限り、大会を心の底から楽しむことはできない。

 

 

2024年6月26日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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