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ウクライナ侵略を続けるロシアのプーチン大統領が通算5期目の統治を始動させた。
2000年に登場したプーチン氏は今後、最長で2期12年、83歳になる36年まで事実上の終身大統領として、ソ連のスターリン時代を上回る長期独裁を維持する可能性がある。
プーチン氏は就任演説で、3月の大統領選での「圧勝」を踏まえ、「われわれは結束した偉大な国民だ。あらゆる障害を克服して計画したすべてを実現する」と強調した。侵略を継続し、最終的にはウクライナの自由と独立を奪って属国化するという野望の吐露だ。
冷戦後の国際秩序を力で破壊しようとする独裁者の暴走は阻止せねばならない。
プーチン氏は西側諸国に対して「対話は拒否しない」としながら、「ロシアの発展を抑えつけ、侵略・圧力政策を続けるのか」と迫った。ロシアがまるで「被侵略国」であるかのような詭弁(きべん)である。
大義なき侵略はすでに800日を超えた。ウクライナの無辜(むこ)の犠牲者は増え続けている。ロシア国内では「反戦」「反政権」派を封じ込める人権・言論弾圧が苛烈化している。
劣勢が伝えられるウクライナ軍に、この半年ほど滞っていた米国からの軍事支援がようやく届き始めた。西側はこうした機会に結束を新たにし、プーチン氏の野望をくじくためにロシア軍の全面撤退へ圧力を強めるべきだ。バイデン米大統領は「われわれは独裁者に立ち向かう。プーチン氏にも屈しない」と語った。
ロシア国防省は就任式前日、ウクライナに接する露南部軍管区の戦術核兵器を運用するミサイル部隊が、軍事演習を近く実施すると発表した。露側は「西側当局者がウクライナ派兵の可能性に言及した挑発的な発言への対応」としているが、核に絡んだ軍事演習の威嚇とは言語道断だ。
プーチン氏は「ロシアを信頼する諸国との関係を強化する」とも述べた。経済・軍事関係を強める中国、北朝鮮を近く訪問する予定だ。
プーチン氏は、ロシアの安全が保障される形での新国際秩序の構築を自身の歴史的使命と考えているという。だが、力による現状変更は到底許されないことを知るべきだ。
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2024年5月9日付産経新聞【主張】を転載しています