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ミャンマー国軍がクーデターで全権を掌握して3年が経過した。多くの命が失われ、国土は荒廃した。人々の生活は困窮し、人道危機は深刻化している。人々は「沈黙のスト」などの手段で、あるいは武器を手に抵抗を続けている。
軍事政権に正当性や国民からの支持がないことは明白だ。直ちに弾圧をやめ、民主主義の回復を前提にした対話を始めなければならない。
日本を含む国際社会は、軍事政権への圧力を強め、戦闘などで家を追われた国内避難民らへの人道支援を実現すべきだ。
軍事政権は1月31日、非常事態宣言の半年間の延長を発表した。憲法の規定で、選挙の実施は来年2月に先送りされた。
ミャンマーの人権団体によるとこの3年間、弾圧で4400人以上が死亡した。国連は国内避難民は約260万人に上ると発表した。
一部の民主派勢力は、少数民族の武装勢力と連携して攻勢を強めている。既にミャンマー軍の500以上の拠点を制圧した。ミャンマー軍側は部隊規模での投降が相次ぐなど、士気低下が指摘されている。軍事政権トップのミンアウンフライン総司令官の求心力は弱まりつつあるとされるが、ミャンマー軍は都市部など人口の多い地域を掌握しており、民主派や武装勢力による形勢逆転までには至らない見通しだ。
国連の特別報告者は昨年5月、ミャンマー軍が中国やロシアなどから武器を輸入しており、ロシア製の戦闘機が市民への無差別空爆に使われたと報告した。中露両国は、人道に背く武器の供給を即刻停止しなければならない。
米国と英国はクーデターから3年を機にミャンマー軍関連の企業や関係者に追加制裁を科した。自国企業との取引禁止などで資金を断つ狙いがある。
日本の対応は腰が引けている。クーデター前の政権トップだったアウンサンスーチー氏らの解放を要求するが、制裁とは距離を置いている。
日本はアジアの民主主義国として対話の仲介など、ミャンマーに積極的に関与すべきだ。
国際社会の関心はロシアによるウクライナ侵略やガザでの紛争に集中しがちだが、3年以上続くミャンマーの惨状も忘れてはならない。
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2024年2月3日付産経新聞【主張】を転載しています