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新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種が12月から始まる。2回の接種を終えた人に順次、接種券が送られる。当面は18歳以上が対象だ。
日本の感染状況は今のところ落ち着いているが油断は大敵だ。追加接種を進め、コロナの被害を抑え込もうとするのは極めて妥当である。
使用されるのは当面、ファイザー社のワクチンで、1、2回目と異なるワクチンを打つ「交差接種」も認められた。
ワクチン接種による感染の予防効果は時間とともに低下する。一方で、重症化や死亡の予防効果は時間がたっても一定程度維持されることが分かってきた。
ただし、高齢者では重症化予防効果も低下するとの調査結果がある。高齢者や基礎疾患のある人、医療や介護に従事する人はとりわけ確実な接種が推奨される。
厚生労働省は当初、接種間隔を2回目から概(おおむ)ね8カ月以上としていたが、自治体の判断で例外的に6カ月後からも可能とした。
接種の開始が日本に先行した欧米諸国では、流行の再拡大が起きている。日本での第6波の到来を12月から来年1月頃と予想する専門家もいる。準備作業を速やかに進め、態勢が整った自治体から接種を始めてもらいたい。
大切な追加接種であるにもかかわらず、岸田文雄内閣の対応には残念な点もある。
まず、情報発信が分かりにくい。発信力が問われた菅義偉前内閣の轍(てつ)を踏んではならない。
後藤茂之厚労相は11月16日の会見で「8カ月以上を原則として接種をしていただく方針に変わりはない」と強調し、堀内詔子ワクチン担当相も「8カ月以上の間隔をあけることが原則」と語った。
原則を強調する背景には、接種時期の前倒し容認に対して、一部の自治体から「間に合わない」との声が上がったことがあるのではないか。
政府は前倒し容認を、地域の感染状況を踏まえた例外的な対応と解説しているが、感染拡大を見てから急いだのでは遅すぎる。
また、自治体から「間に合わない」との声が出ること自体が混乱ぶりを示している。政府は検討や自治体への準備呼びかけをもう少しうまくできなかったのか。パンデミック(世界的大流行)は収束していない。緊急時という認識にふさわしい行動をしてほしい。
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2021年11月18日付産経新聞【主張】を転載しています