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第50回衆院選の投開票が行われた。政権の信を問うと臨んだ石破茂首相は勝敗ラインに自民党、公明党の与党過半数を設定していたが、届かなかった。立憲民主党は躍進し、国民民主党も議席を伸ばした。

 

自民にとって野党に転落した平成21年の衆院選以来となる歴史的敗北だ。首相は選挙結果を重く受け止めねばならない。

 

今後自民は非公認当選者の追加公認を図る見通しだ。

 

国際情勢は厳しく、混迷の度合いを増している。今後、特別国会で首相指名選挙が行われるが、各政党は安定政権を作るべく努力してもらいたい。国政を停滞させてはならない。

 

開票が進み記者団の取材に応じる自民党の石破茂首相=10月27日午後、東京・永田町の党本部(春名中撮影)

 

言い訳選挙では勝てぬ

 

今回の大敗は、石破首相と自民執行部が「言い訳選挙」にしてしまったことが大きい。言い訳選挙で優勢に戦うことなど望むべくもない。

 

自民の旧安倍派などの派閥パーティー収入不記載事件への有権者の怒りはくすぶっていた。それにうまく対応できなかったのが首相だった。就任後、不記載の前議員の非公認を増やし、比例代表との重複立候補を認めなかった。

 

しかも一気に事を決めず騒動を続けた。世間の関心が「政治とカネ」一色になったのはそのせいでもある。

 

衆院選から一夜明け、記者会見する自民党総裁の石破茂首相(左)=10月28日午後、東京・永田町の党本部(春名中撮影)

 

選挙戦最終盤には自民が、非公認にした候補が代表を務める政党支部に活動費2千万円を支給したことが報じられ、首相は党勢拡大のためで「選挙に使うことはない」と釈明した。

 

これも有権者の投票行動を左右した可能性がある。有権者や他党からどう見られるかを考えなかった石破首相や森山裕幹事長には、自民内から疑問の声が上がった。

 

石破首相は高市早苗前経済安全保障担当相との協力関係構築にも失敗し、閣僚人事で挙党体制を作らなかった。自民の岩盤支持層の離反を招き、票が日本保守党や参政党などへ流れた。国会論戦も十分に行わず早期解散に走った。これで勝てると思っていたのなら信じがたい。

 

衆院選で政治とカネの問題への有権者の憤りが改めて示された。各党は政治改革の具体策で合意し、速やかに実行に移すべきだ。それを怠れば政治不信に拍車がかかる。

 

言い訳選挙になったのは、もう一つ理由がある。それは、石破首相が政治とカネの問題を上回る、または匹敵するような政策上の大きな争点を国民に示せなかったことだ。

 

衆院選は常に日本の独立と繁栄、国民の生活と暮らしがかかった、日本の針路を決める政権選択選挙なのである。にもかかわらず日本の針路を巡る本格的な論戦は展開されなかった。とりわけ日本を守る安全保障が重視されなかったのは残念だ。

 

笑顔で取材に応じる立憲民主党の野田佳彦代表=10月27日午後、東京・永田町の党本部(鴨川一也撮影)

 

立民は国を守れるのか

 

台湾有事の懸念が高まっている。公示の前日には、中国軍が台湾を包囲する形で大規模な演習も行った。今回の衆院選で選ばれた議員が台湾有事に直面する可能性がある。北朝鮮の軍はウクライナ侵略に加担する見通しだ。朝鮮半島有事がロシアを含む日本有事へ拡大することもあり得る。

 

その危機が十分には語られず、抑止力のための防衛力の抜本的強化、国民保護などの具体策の議論が深まらなかったのは問題だ。

 

立民の影響力は増大する。野田佳彦代表は外交・安保政策の継続性を重視する考えを示す一方で、集団的自衛権の限定行使は憲法違反という党の立場を変えていない。反撃能力の保有にも積極的ではない。

 

これで国民を守れるのか。この政策では日米同盟を危機に陥れた旧民主党政権の二の舞いになる恐れがある。政策上の欠陥を抱えたままの立民に政権担当能力があるのか疑問だ。

 

経済を巡っては、各党がこぞって消費税減税や給付金支給などの物価高対策を示した。だが財源を含む具体化の道筋にはあいまいなものが多く、バラマキ色が目立った。物価高に負けない賃上げを果たし、デフレからの完全脱却を確実にするには、生産性を向上させて企業の収益力を高める取り組みが欠かせない。そうした積年の課題を解決しなければならない。

 

憲法改正の動きを後退させてはならない。自民の大敗に加え、改憲に前向きな日本維新の会が振るわなかった影響は大きい。自衛隊明記や緊急事態条項の創設は急務で、国会は改憲原案の条文化を進めるべきだ。

 

 

2024年10月29日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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