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中国が自国警察の出先機関を外国に密(ひそ)かに設けて中国人取り締まりを行うのは国際法に反し、設置された国の主権を侵害するのは明らかだ。許されることではない。
米司法省は、中国公安省が米ニューヨークに設けた闇警察(非公然警察署)の開設・運営に関わったとして、中国系米国人の男2人の逮捕を発表した。
中国の海外闇警察の刑事摘発が報じられたのは世界で初めてだ。韓国警察が3月末に、中国の闇警察の拠点の疑いがもたれるソウル市内の中華料理店の経営者らを、食品衛生法違反などの容疑で摘発したことも新たに分かった。
米司法省は昨年秋、ニューヨーク市内の闇警察を家宅捜索して閉鎖させた。オランダ、アイルランド、チェコ、ドイツなども閉鎖命令を発した。主権国家として当然の対応だ。
逮捕された2人は中国公安省の指揮下で、中国政府に批判的な在米中国人に帰国の圧力をかけたり、民主活動家の居住場所特定に携わったりした疑いもある。中国国内における弾圧を、外国へも延長して行った実例である。
中国外務省は「海外警察は存在しない」としらを切った。問題の施設は闇警察ではなく、在米の中国人に運転免許更新などの行政サービスを提供していたと釈明した。だが、これら行政サービスですら問題がある。米国の同意が必要な領事業務を勝手に行っていたため、ウィーン条約違反の疑いがあるためだ。
スペインの人権NGOは、中国の闇警察は世界50カ国以上に102カ所あると指摘した。中国人約1万1千人が闇警察による嫌がらせや拘束によって帰国を強いられたという。日本では東京・秋葉原にあるとされた。
日本に中国の違法な闇警察がある疑いは極めて強い。日本政府は主権を侵害しているなら認められないと中国政府に伝えたが、これでは抗議の体をなしていない。
なぜ日本政府は闇警察の実態を暴き、閉鎖を命じないのか。中国政府を恐れているのであれば情けない。日本にいる中国人からの広範な聴取も実施すべきである。
日本の主権にかかわる重大事である。スパイ防止法がないため中国に付けこまれているなら、なおさら問題だ。岸田文雄政権は欧米や韓国を見習って、中国の闇警察を排除せねばならない。
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2023年4月22日付産経新聞【主張】を転載しています