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政府が世界文化遺産登録を目指す「佐渡島の金山」(新潟県)について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関が補足説明などを求める「情報照会」を勧告した。
登録内定には至らなかったが、佐渡金山の世界的価値を認める内容だ。政府は地元自治体と連携し、登録実現へ万全を期してもらいたい。
勧告には、登録▽情報照会▽登録延期▽不登録―の4段階がある。佐渡金山は今回、「(登録を)考慮するに値する価値を有する」と評価された。その上で、明治以降の遺産が多い一部地域の除外▽遺産保護のための緩衝地帯の拡大▽商業採掘を再開しない確約―の3点について補足説明を求められた。
勧告を踏まえて内容を一部見直し、適切に説明すれば、7月に開かれるユネスコ世界遺産委員会で登録が決議される可能性は十分ある。昨年は情報照会の勧告を受けた6件が全て同委員会で登録決議された。
林芳正官房長官は会見で「登録に向け、政府一丸となって対応する」と述べた。地元自治体とも早急に協議し、しっかり対応してほしい。
一方、今回の勧告では補足説明とは別に、「配慮すること」として「全体の歴史を現場レベルで包括的に扱う説明・展示戦略」も求められた。これを受けて韓国外務省当局者が「韓国の立場が十分反映されれば(登録を)妨げない」との考えを示したのは問題だ。場合によってはなお妨害するつもりなのか。
韓国側はこれまで、佐渡金山は戦時中の「強制連行の被害現場」だとして登録に反発し、その言い分を認めるよう訴えてきた。しかし当時の朝鮮半島出身者には給与も支払われており、韓国側の主張は言いがかりである。日本政府は令和3年、「強制労働には該当しない」との答弁書を閣議決定している。
そもそも日本側が推薦する佐渡金山の文化的価値は江戸時代までだ。「全体の歴史」を説明するにしても、閣議決定に沿った内容でなければならず、「韓国の立場」でないのは言うまでもない。
佐渡金山は、独自の技術により江戸時代の17世紀には世界最大級の金の産出量を誇った鉱山遺跡だ。その歴史と文化的価値を歪(ゆが)めることなく、世界遺産にしなければならない。
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2024年6月13日付産経新聞【主張】を転載しています