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東京電力福島第1原発処理水の海洋放出に反対する中国政府の姿勢は道理に合わず悪質である。到底容認できない。
国際原子力機関(IAEA)の年次総会がウィーンで開かれた。中国代表は処理水を「核汚染水」と呼び、海洋放出を強く非難した。
初回の放出は9月11日に終わった。放出開始からは1カ月が過ぎた。周辺海域や水産物のモニタリング調査で異常は確認されていない。安全を確保しながら実施されたということだ。
にもかかわらず中国政府は根拠もなく不当な非難を続けている。非科学的かつ反日的な姿勢には呆(あき)れてしまう。
年次総会では、欧州などの国々から放出への理解の声があがった。中国に同調する国はみられなかった。
中国政府は放出批判を直ちにやめるべきだ。日本産水産物の輸入禁止も撤回しなければならない。
総会で高市早苗科学技術相ら日本側が中国政府からの攻撃に対し、直ちに反駁したのは評価できる。高市氏は、日本はIAEAの関与の下で処理水を放出し、国際社会へ丁寧に情報提供してきたと説明した。「IAEAに加盟しながら事実に基づかない発信をし、突出した輸入規制をしているのは中国だけだ」とも述べ、中国政府のおかしさを際立たせた。
複数の中国の原発から放出されるトリチウムは、福島第1の処理水で放出されるトリチウムの5倍から10倍に上る点も指摘した。
中国政府は日本産の水産物を禁輸した。だが、一方で、中国漁船が日本漁船も操業する太平洋、日本海、東シナ海で漁を続けることを容認している。中国から日本を訪れる観光客の相当数が、日本の水産物に舌鼓を打っている。
中国政府自身も、中国からの少なからぬ訪日観光客も、本音では処理水放出が危険だと考えていないのではないか。
真実や科学にのっとって主張を展開しなければ、ただでさえ高くない自国への国際社会の信頼がさらに損なわれる点に中国政府は気付いたほうがいい。
岸田文雄政権は処理水放出について内外への丁寧な説明を続けるとともに、中国による不当な水産物禁輸を世界貿易機関(WTO)へ提訴すべきだ。
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2023年10月1日付産経新聞【主張】を転載しています