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令和5年の合計特殊出生率が1・20と過去最低を更新した。全都道府県で低下し、東京都は1を下回り0・99だった。厚生労働省の人口動態統計(概数)で明らかになった。
合計特殊出生率とは女性1人が生涯に産む子供の推定人数を示したものだ。人口の維持に必要な出生率は2・07とされ、それには程遠い状況である。
出生数は過去最少の72万7277人で、出生数に影響する婚姻数は47万4717組と戦後初めて50万組を割った。
極めて深刻な事態であるのは論をまたない。少子化対策関連法が5日の参院本会議で可決、成立した。児童手当や育児休業給付の拡充、親の就労に関係なく子供を預けられる「こども誰でも通園制度」の実施などが盛り込まれている。
経済不安を抱え、子供を産みたくてもためらう人は少なくない。若年層の雇用の安定と所得の向上が急務だ。資金面の支援も必要である。子育ての負担が女性に集中する傾向は依然あり、仕事と育児が両立し得る環境を整えることも重要だ。対策を着実に実施し、結婚や出産をあきらめない社会にしたい。
ただし、これらの政策を行うだけでは不十分だ。同時並行で進めねばならないことがある。人口が減っても、治安を守りながら、豊かさを享受できる日本を築き上げることだ。
岸田文雄首相には人口減に対応した国づくり、地域づくりを政権全体の重要課題に位置付け、人口目標とともに将来像を示してもらいたい。
人口が減っても高齢者の増加は当面続く。その一方で現役世代は減少し人手不足に拍車がかかるのは避けられない。
過疎化は進み、税収減で地方財政が悪化すれば、行政サービスを十分提供するのは困難になる。高度経済成長期に整備した道路や水道などのインフラは老朽化し、その対策費用が重くのしかかる。交通機関が衰退していく懸念もある。公共施設や住まいを集約させる「集住」にも取り組みたい。
限られた人材や資金で、人工知能(AI)なども活用して効率的な社会にしていくことが不可欠であり、そのためには都道府県の再編もためらうべきではない。地域の在り方を根本から変革する覚悟が、政府や自治体に問われている。
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2024年6月7日付産経新聞【主張】を転載しています