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天皇、皇后両陛下が6月17日からインドネシアを国賓として訪問された。昨年9月に英国のエリザベス女王の葬儀に参列されたが、親善が目的の外国ご訪問は即位後初めてとなる。国民も両国間の歴史を知り、令和の友好を深める機会としたい。
ご訪問は23日まで1週間の日程だ。ジョコ大統領と会見されたほか、両国の友好に尽くしてきた各分野の人々と交流される。
天皇陛下は記者会見で、先の大戦で日本がインドネシアを占領下に置いたことへの質問に、難しい時期があったという考えを示された。「亡くなられた方々のことを忘れず、過去の歴史に対する理解を深め、平和を愛する心を育んでいくことが大切ではないかと思います」と指摘された。
昭和から平成、令和へと時代が移り、歴史を継承する意義は増している。
日本は先の大戦で、植民地支配していたオランダを放逐しインドネシアに軍政を敷いた。師範学校などを設けて教育を推進し、祖国(郷土)防衛義勇軍(PETA)をつくって多くのインドネシア青年を訓練した。彼らが大戦後、再び支配にやってきたオランダとの独立戦争の中心となった。
首都ジャカルタの独立記念塔に収められたインドネシア独立宣言書の日付は「17/8/05」である。05年8月17日を意味するが、05年は日本紀元(皇紀)2605年のことだ。昭和20年、西暦1945年に相当する。
独立運動の指導者で後に初代大統領になるスカルノらが、日本の敗戦直後に、日本紀元を記した独立宣言書を自主的に作ったのである。その後、再植民地化をあきらめないオランダ軍と戦った。
今回のご訪問中には、独立戦争で亡くなった兵士らを埋葬するジャカルタのカリバタ英雄墓地を訪れ、供花される。この墓地には、先の大戦後も現地に残り、独立戦争に加わった残留日本兵も眠っている。残留日本兵の子孫と面会される予定もある。
インドネシアは地域の大国として存在感を高めている。近年は、高速鉄道計画などを巡り日本とぎくしゃくすることもあった。友好協力関係の再構築が急がれる。
天皇陛下がご訪問を通じ外国との絆を強められる意義は極めて大きい。素晴らしいご訪問になることを国民こぞって祈念したい。
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2023年6月16日付産経新聞【主張】を転載しています