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2月7日、ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵略を始めてから2度目の「北方領土の日」を迎えた。
択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島からなる北方四島は日本固有の領土である。だが、昭和20年夏の終戦時、ソ連が日ソ中立条約を破って侵攻し、火事場泥棒的に占領した。今もロシアが不法占拠している。
ウクライナはロシア軍に侵攻され、領土を占領されている。北方領土とウクライナは同じ構図の問題といえる。
領土を取り戻すために日本とウクライナは連帯を強め、侵略者ロシアに立ち向かいたい。
岸田文雄首相は国会の施政方針演説で「対露制裁、対ウクライナ支援は今後とも強力に推し進める」「日露関係は厳しい状況にあるが、わが国としては、領土問題を解決し、平和条約を締結する方針を堅持する」などと述べた。
「厳しい状況」の中で岸田政権が取り組むべきことは制裁と支援にとどまらない。日本はウクライナと同様に、ロシアに領土を不法に奪われている被侵略国だ―という事実を内外に強く発信することである。
一昨年10月、ウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアは北方領土には何の権利もない。われわれはもはや行動すべきだ」とする大統領令に署名した。日本への心強いエールだったが、岸田政権は反応しなかった。日本外交には北方領土問題の国際化戦略が欠けている。
プーチン氏は1月、「クリール諸島(北方領土と千島列島)」について「必ず訪れてみる」と将来の北方領土上陸を示唆した。メドベージェフ露国家安全保障会議副議長は岸田首相の施政方針演説を受け、SNSへの投稿で「われわれにとって日本国民の北方領土への感情などどうでもよい。それを悲しむサムライは日本の伝統的な方法で自決すればよい。そう、切腹だ」と言い放った。
どちらも日本を愚弄する発言で到底容認できない。
北方領土に関する内閣府の直近の世論調査では、ロシアが不法占拠している現状について「知らない」と答えた若者(18~29歳)が47%もいた。
北方領土の日を契機に、日本の主権が侵害された問題を改めて思い起こし、4島返還の実現へ結び付けねばならない。
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2024年2月7日付産経新聞【主張】を転載しています