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Etorofu (Iturup) Island in Japan's Northern Territories
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ロシアによるウクライナ再侵攻が国際的に懸念される中で、2月7日の「北方領土の日」を迎えた。岸田文雄首相には、日本固有の領土である北方四島返還に向けた決意を、国民の代表として力強く語ってほしい。
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ただし、求められているのは、日本にますます傍若無人な態度をとるプーチン露政権に迎合し、懇願するような対露外交ではない。
ウクライナ危機でロシアの無法ぶりが国際的に批判されている折である。日本がなすべきは、対露制裁の策定などで米欧と歩調を一つにし、さらには北方領土問題でのロシアの不当性を広く国際社会に訴えることだ。
近年のプーチン露政権は北方領土が「第二次大戦の結果としてロシア領になった」との虚説をふりまき、領土問題の存在すら否定する。一昨年の露憲法改正では「領土割譲の禁止」を盛り込み、厳しい罰則規定も設けた。ロシアのガルージン駐日大使は最近の日本外国特派員協会での記者会見で、日本と行ってきたのは平和条約締結交渉であり、北方領土交渉ではないと言ってのけた。
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昨年の北方領土の日に本紙「主張」は「日本を愚弄し、翻弄し続けるプーチン政権との領土交渉はこちらから打ち切る決断をすべきときではないか」と訴えた。この立場は何ら変わっていない。
今の日本が全力を尽くすべきは、民主主義陣営の結束強化であり、北方領土問題の「国際化」である。1990年から92年の先進7カ国首脳会議(G7サミット)は毎年、議長声明や政治宣言でソ連・ロシアに北方領土問題解決を促した。これに倣い、日本への支持を広く取り付けてロシアに圧力をかけることが重要だ。
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ロシアは2014年、ウクライナ南部クリミア半島を併合し、東部でも親露派武装勢力を支援して政府軍との紛争を惹起(じゃっき)した。昨年秋以降もウクライナ国境近くに10万人以上の軍部隊を集結させ、軍事的威嚇を続けている。
北方領土でソ連・ロシアの侵略を受けてきた日本は、ウクライナと認識を共有し、ウクライナを支える米欧諸国と協調すべきだ。歴史的にソ連・ロシアに辛酸をなめさせられてきた東欧・バルト諸国の知見にも学ぶ必要がある。
北方領土を返還させる好機は必ず来る。着々とそれに向けた素地をつくっておくことだ。
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2022年2月7日付産経新聞【主張】を転載しています