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来年度予算が3月28日の参院本会議で与党などの賛成多数で可決・成立し、前半国会が終わった。
今国会は、反撃能力の保有を盛り込んだ国家安全保障戦略など安保3文書が昨年末に閣議決定されたのを受け、抑止力や対処力の向上に関する論戦などが期待された。
だが、参院予算委員会で立憲民主党は放送法に関する総務省の行政文書を巡り、かつて放送法の解釈に関して答弁した高市早苗経済安全保障担当相への追及に終始した。建設的な防衛論議に至らなかったのは残念だ。
立民は同党の小西洋之氏が公表した文書について、「放送法の解釈がゆがめられたことを示す超一級の行政文書だ」と政府への攻撃材料とした。ただ、その作成者は不明で、相手方に発言内容を確認していない不正確な内容も含まれていたことが判明している。
高市氏は「文書は捏造(ねつぞう)だ」と主張し、岸田文雄首相も「放送法の解釈は一貫している」と高市氏への立民の辞任要求をはねつけた。放送法の解釈変更が確認されていない以上、当然の判断だ。
国会審議では、こうした高市氏に対する追及に多くの時間が費やされた。その一方で緊迫度が高まる国際情勢について、具体的な論戦が乏しかったのは問題だ。
3月下旬には中国の習近平国家主席が訪露し、国際刑事裁判所(ICC)からウクライナ侵略に伴う戦争犯罪容疑で逮捕状が出たロシアのプーチン大統領と首脳会談を行った。それでも覇権主義を強める国同士の連携を警戒するような論戦は見られなかった。
同じ時期には岸田氏がウクライナを電撃訪問し、ゼレンスキー大統領と連帯を確認した。この訪問をめぐる議論でも、ゼレンスキー氏に「必勝しゃもじ」を贈ったことの是非が取り沙汰されるなど、ウクライナ支援のあり方などの本質論は深まらなかった。
立民などは安保3文書の撤回を求め、防衛費についても「5年間で43兆円が必要なのか」と懐疑的な見方を示した。岸田氏が政府内の検討によって防衛費を積み上げたと説明したうえで、「抑止力、対処力を高めれば武力攻撃の可能性を低下させられる」と明快に答弁したことは評価したい。
与野党ともに日本が先進7カ国首脳会議(G7サミット)議長国として重い責任があることを認識し、後半国会に臨んでほしい。
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2023年3月29日付産経新聞【主張】を転載しています