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FILE PHOTO: Jordanian Dinar, Yuan, Dollar, Canadian Dollar, Pound and Riyals banknotes are seen in this picture illustration taken June 13, 2017. REUTERS/Dado Ruvic/Illustration/File Photo

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経済協力開発機構(OECD)の加盟国を含む130カ国・地域が7月1日、法人課税をめぐるルール案で合意した。最低税率を「少なくとも15%」と定めた。

 

巨大なIT(情報技術)企業を念頭に置いたデジタル課税は「売上高200億ユーロ、利益率10%」を基準とし、世界の約100社を対象にする。

 

今年10月までに細部を詰めて最終合意し、2023年の導入を目指す。これによって世界の法人税は過度な税率引き下げ競争に終止符を打ち、課税逃れに対する世界的な批判が高まっている巨大IT企業にも適正な税負担を求めることになる。

 

今回の合意は、国際的な法人税改革の大きな転換点となるだけに着実な実行が欠かせない。各国は詳細な制度設計を急ぎ、合意への参加を見送ったアイルランドなど低税率国に対する参加の働きかけも強めるべきだ。

 

世界の法人課税は経済のグローバル化などに伴い、優良企業などの誘致のために税率引き下げが30年以上にわたって繰り広げられてきた。だが、コロナ禍に対応して各国とも財政支出を拡大させており、税収を確保するために税率引き下げに歯止めをかけたい事情があった。利害が対立する世界の主要な国々が協調し、新たな時代に対応した法人税改革で足並みを揃(そろ)える意義は大きい。

 

巨大IT企業はタックスヘイブン(租税回避地)に本社などを移転させ、過度な税逃れをしているとしばしば指摘される。そうした企業に対しても適正な税負担を求めて、社会的な責任を果たすように促すことは格差是正にもつながっていく。

 

それだけに参加各国は着実な実施に向けて丁寧に協議を重ねて最終合意を図りたい。表向きの法人税率は15%以上でも、特例的にそれを下回る税率を認める事例なども予想される。抜け道を許さない制度設計が不可欠だ。各国の法人税率の実態を検証する仕組みも検討すべきである。

 

今回の合意は、協議に参加していた139カ国・地域のうち、アイルランドやハンガリー、エストニアなど9カ国の低税率国が合意を見送った。例外となる国があると実効性が確保できなくなる恐れもある。そうした事態を避けるためにも多くの国が連携して参加を強く促していくべきだ。

 

 

2021年7月7日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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