World Series

Los Angeles Dodgers designated hitter Shohei Ohtani (17) celebrates after winning the 2024 MLB World Series against the New York Yankees at Yankee Stadium on Oct 30, 2024. (Vincent Carchietta/Imagn Images)

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今季の大谷翔平を振り返るとき、満面の笑みしか浮かばない。

 

ついに念願のワールドシリーズを制し、ドジャースの仲間とともにシャンパン・シャワーを浴びて感情を爆発させた。シーズンを通して、大谷の笑顔とともに始まる日本の朝は幸福だった。

 

ただし大谷にとっては、波瀾(はらん)万丈の1年でもあった。

 

ワールドシリーズ第2戦の7回、盗塁を試みてタッチアウトされる大谷。大谷はこのプレー中に負傷した=10月26日(©AP Photo/Ashley Landis)

 

昨秋、右ひじを手術し、今季はリハビリに専念して投手との二刀流は封印した。

 

万年下位のエンゼルスから、「ひりひりする9月」を求めて強豪のドジャースに、10年1000億円の世界のスポーツ史上最高額の契約で移籍した。

 

結婚もした。そのプレッシャーは、想像し難いほど大きかったはずだ。

 

開幕と同時に、盟友でもあった専属通訳がスポーツ賭博で摘発され、解雇された。大谷の関与を疑う声まであり、とても野球に専念できる環境だったとは言い難い。

 

ファンに手を振る大谷=9月19日(©AP Photo/Wilfredo Lee)

 

それでも大谷は球団の勝利のために打ちまくり、走りまくった。結果、長い大リーグ史上でも前人未到の「50―50(50本塁打、50盗塁)」を、地区優勝を争う中で達成した。

 

しかも「40―40」はサヨナラ満塁弾で、「50―50」は3本塁打10打点2盗塁の大活躍で一気に到達した。記録だけではなく記憶に残る男として、日本のみならず、今や全米のヒーローとなった。愛犬の「デコピン」まで人気者となっている。

 

ワールドシリーズでは、第2戦の二盗失敗時に左肩を亜脱臼して3戦以降の出場が危ぶまれたが、選手全員が入るグループメールに大谷から届いた「アイ キャン プレー」の短文がチームを鼓舞し、団結させた。

 

World Series
大谷翔平が所属するドジャースがワールドシリーズ制覇したことを伝える産経新聞の号外が配布された=10月31日午後、東京・大手町(鴨志田拓海撮影)

 

大谷がすごいのは、こうした壮絶なシーンを、全て笑顔で乗り切ったことだ。打席で投手と対峙(たいじ)するときでさえ涼やかな笑みを浮かべ、悲壮感をみせることはほとんどない。

 

日本全国の小学校に3個のグラブとともに大谷から届いた手紙には「野球しようぜ」とあった。そのグラブで楽しそうにキャッチボールをする子供たちの姿もみた。

 

大谷の存在はすでに日本人の誇りであり、子供たちの夢そのものである。来季はどんな姿をみせてくれるのか、今から楽しみで仕方がない。

 

 

2024年11月1日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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