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能登半島地震で発生したがれきなどの災害廃棄物は、石川県内で推計244万トンに上る。県内の年間ごみ排出量の約7年分に相当する量である。
廃棄物が大量に残されたままでは復興は進まない。早期に撤去するには、県外を含めた広域処理の枠組みが不可欠だ。国は、東日本大震災などを教訓に、撤去に向けた取り組みを急ぐべきである。全国の自治体も積極的に協力してほしい。
石川県内では5万棟以上の建物が全半壊したとみられる。このうち約2万2千棟が解体されて災害廃棄物になると想定し、県が発生量を見積もった。特に珠洲市や輪島市など奥能登地域の2市2町が全体の約6割(計約151万トン)を占めた。この地域のごみ排出量の59年分に相当するという。
過去の大規模災害でも、廃棄物の処理は復興における大きな課題となった。約2千万トンが発生した東日本大震災では、原発被害の福島県を除き処理するまでに約3年かかり、約311万トンだった熊本地震でも約2年を要した。
今回の場合、地理的な問題もあり一層の困難が予想される。能登半島は幹線道路が少ない上、陥没や亀裂など陸路の被害が深刻で復旧には相当な時間がかかるからだ。
石川県は3月から倒壊建物の解体を始め、令和7年度末までの処理完了を目指す。がれきや家具などの災害廃棄物は各市町に設置された仮置き場に運ばれるが、まずはそこまでの陸路を早急に確保したい。
奥能登地域などの廃棄物は、海上輸送により県外で処理することも検討している。受け入れ可能な自治体は進んで手をあげてもらいたい。国は調整に努めてほしい。
廃棄物を可能な限り再利用に回す取り組みも重要だ。東日本大震災では宮城県東松島市が徹底した分別リサイクルを行い、建築資材や木材チップなどに加工して9割以上の再利用率を実現した例もある。学ぶべきものは大きいだろう。
一方で、さまざまな思いが詰まった家具などを廃棄する住民らの気持ちにも寄り添いたい。そうした家具を運び出すボランティアへの期待も高く、国と県は連携し、官民の協力で処理を進められるよう、早急に態勢を整えるべきである。
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2024年2月10日付産経新聞【主張】を転載しています