姉妹都市というには、相手方の対応はあまりに不誠実である。史実の誤認もはなはだしい。
大阪市の吉村洋文市長が、米カリフォルニア州サンフランシスコ市に姉妹都市提携の解消を知らせる書簡を送った。同市が、中国系団体に寄贈された慰安婦像と碑の受け入れを覆すことはないと判断したためである。
これに対しサンフランシスコ市長は声明を出し、一方的な関係の解消はできないとした。慰安婦像については「奴隷化」などの言葉を使って正当化した。とても認められるものではない。
碑文には「日本軍に性奴隷にされた数十万人の女性や少女」などと書かれている。これ自体、史実の歪曲(わいきょく)である。ましてそのような像や碑を海外の自治体が公共物とすることなど、許せない。自治体がお墨付きを与えた形になる。
吉村市長は受け入れに再三、反対してきた。相手市長が死去し、新市長に改めて撤回を求めたが、期限までに返事はなかった。これだけでも非礼なうえ、開き直ったような今回の声明である。
残念だが、姉妹都市である必要はない。慰安婦問題で妥協は一切、不要である。
海外に設置される慰安婦の像や碑は、日本をおとしめる目的を持ったものだ。反日世論を高め、日本と友好国の関係を動揺させる意図があろう。日本の安全保障にも悪影響をもたらしかねない。
何より、名誉に関わる。「性奴隷」などという悪質な宣伝には毅然(きぜん)と声を上げるべきだ。同時代の日本人だけでなく、先祖と子孫の名誉を守らなければならない。
本来、外務省が強く抗議して像や碑をなくしていくべきだが、対応が十分とはとてもいえない。そんな中、大阪市のように自治体が抗議する意味は大きい。中傷に屈しない意志を、市民という草の根から示すことになる。
独フライブルク市では、姉妹都市である松山市の働きかけで慰安婦像の計画が中止になった。同様のケースがあれば、ほかの自治体も毅然と対応してほしい。
大阪市は昭和32年にサンフランシスコ市と姉妹都市になり、さまざまな交流を続けてきた。市としての交流は止まるが、民間レベルでは今後も大いにあっていい。
吉村市長の書簡は礼儀にのっとったものだった。サンフランシスコ市の反省と再考を促したい。