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アメリカンフットボール部の違法薬物事件を受けて日本大学の林真理子理事長らが会見した。林氏は学生らに混乱を謝罪し「改革を成し遂げる責任を全うしたい」と述べたが、その中身については不透明なままだ。
会見は大学運営の改善計画の説明から始まった。酒井健夫学長、沢田康広副学長は辞任、林氏は減給とされた。根拠は改善計画に明記された責任の度合いである。酒井氏は「重い」、沢田氏は「最も重い」、林氏は「決して軽くはない」とされた。いまだ処分がないアメフト部の部長、監督らの責任は「ないとは言えない」との表現にとどまった。
林氏は「理事会による公正な判断」としたが、評価の基となった第三者委員会の報告は林氏が調査の指示や理事会への報告を怠ったことを「著しく不適切な対応」と批判していた。「早期に適切な組織的対応をとっていれば信頼を失う事態を回避できた」とする報告の指摘は、部の指導陣に責を問うている。
改善計画は冒頭で「アメフト部のことはアメフト部内で収める」といった「強固なムラ社会の意識」が主な原因と記し、会見に同席した益子俊志・スポーツ科学部長も「指導陣の責任も大きい」と述べた。それでも日大OBの指導陣は守られた。根底の評価に矛盾があれば、正しい未来像は描けない。
こうした評価によって理事長にとどまった林氏は「日大を変える大きな柱は学生スポーツだと考える。日大の学生スポーツを変えれば、日本の学生スポーツも変えられる」と風呂敷を広げた。だが「廃部方針」については「私の考えはご容赦いただきたい」と述べ、廃部判断の最終決裁者が辞任する学長であることについても「学長の考えを聞いていないので分からない」と言葉を濁した。そこに理事長の意思、覚悟はみえない。
会見では日本大学新聞の記者も質問に立ち、「いち学生としてあきれる気持ちでいっぱい。問題解決の糸口はどこだと考えるか」と具体策を求めた。
林氏は「本当に学生には申し訳ない。早くこの問題を終われることが一番の解決策だと思っている」と述べた。これが正直な気持ちだったのだろう。
だが、問題の根は深い。拙速な事態収拾を目指せば、混乱の深化を招くだけだ。
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2023年12月6日付産経新聞【主張】を転載しています