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上川陽子外相と木原稔防衛相がフィリピン・マニラを訪問し、日比の外務・防衛閣僚協議(2プラス2)を開いた。自衛隊とフィリピン軍の相互往来を容易にする「円滑化協定(RAA)」の署名式も行われた。
2プラス2では、自衛隊とフィリピン軍の相互運用性の促進など、防衛・安全保障協力の強化で一致した。中国牽制(けんせい)が念頭にある。木原氏が共同記者会見で、RAA署名を踏まえ「自由で開かれたインド太平洋の実現のため、日比2国間や多国間の連携を強化していく」と表明したのは妥当である。
日比は自由と民主主義など基本的価値を共有し、米国と同盟関係にある。日本がRAAを結ぶのはオーストラリア、英国に続いて3カ国目だ。英豪と同様にフィリピンとも準同盟関係を築き上げたい。
RAAが発効すれば自衛隊とフィリピン軍は相手国内での共同演習や災害救助活動をスムーズに実施できるようになる。岸田文雄政権は、毎年実施される米比合同演習「バリカタン」に自衛隊を参加させる方針だ。
日比はいわゆる第一列島線を構成する海洋国家で、中国の侵攻が懸念される台湾を南北から挟むように位置する。2プラス2で「台湾海峡の平和と安定の重要性」などを確認したのは当然である。
オランダ・ハーグの仲裁裁判所は2016年、南シナ海を囲い込み、支配が及ぶとする中国の主張を退けた。だが中国は海軍や海警などでフィリピンを圧迫している。今年6月には南シナ海のアユンギン礁周辺でフィリピン船が中国側に臨検、拿捕(だほ)された。比軍兵士7人が負傷し、うち1人は指を切断した。日比は2プラス2の共同文書で中国の一連の行動に深刻な懸念を表明し、力による現状変更の試みに強く反対した。
フィリピン西方の南シナ海も同国東方の海域も日本にとって極めて重要な海上交通路(シーレーン)だ。フィリピンが中国に隷属せず、国際法を尊重する独立国として繁栄することが日本の国益にかなう。
陸上自衛隊などの南西諸島防衛はフィリピン防衛の参考になる。海上自衛隊のフィリピン訪問、海上保安庁の比沿岸警備隊への能力向上支援も重要だ。日比、日米比の安保協力で対中抑止力を高めるときである。
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2024年7月9日付産経新聞【主張】を転載しています