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多くの日本企業が進出している中国江蘇省の大都市・蘇州の路上で、日本人学校のスクールバスが刃物を持った中国人の暴漢に襲われ、バス待ちをしていた日本人の母と男児がけがをした。
一方、その際に刺され重体だったバス案内係の中国人女性、胡友平さんが亡くなった。
胡さんはバスに乗り込もうとした暴漢を身を挺(てい)して阻んだ。それがなければ、バスに乗っていた日本人学校の子供たちへ被害が広がったとみられている。胡さんの勇気ある行動を称(たた)え、感謝したい。亡くなったのは残念で、哀悼の誠を捧(ささ)げたい。
北京の日本大使館は日の丸の半旗を掲げ、短文投稿サイト微博(ウェイボ)などで胡さんに感謝し、冥福を祈った。上川陽子外相は記者会見で深い悲しみと感謝、お悔やみを表明した。いずれも当然である。
日本政府は胡さんの墓前に政務三役か大使などを派遣し、遺族に気持ちを込めた感謝状などを贈呈したらどうか。
胡さんは、善良で勇気ある中国人の存在を日本人に知らしめた。これは語り継がれるべきことだが、襲撃事件自体は言語道断で、極めて多くの問題をはらんでいる。
暴漢は当局に逮捕され、中国外務省報道官は「警察は偶発的な事件だと判断している」と語った。
だが、本当にそうなのか。反日感情を募らせた末の犯行という疑念は残る。蘇州の事件現場近くでは4月にも日本人男性が面識のない男に切りつけられ、首に軽傷を負った。切りつけた男は警察に拘束された。
スクールバスを襲った事件の直後、中国国内のネット上では、日本人襲撃を称賛する声がみられた。
中国政府による長年の反日教育が、事件の容疑者らの日本人憎悪をかき立てていたのであれば事態は一層深刻だ。中国国内で日本人が安心して暮らせない、旅行できない、ということになりかねない。
胡さんのような善良な人々との交流が続けられるようにしたい。それにはまず、裁判などを通じて、蘇州の一連の事件の全容が公表されるべきである。
同時に、中国政府や日本の外務省、企業は、日本人の安全確保に徹底して取り組まなければならない。
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2024年6月30日付産経新聞【主張】を転載しています