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群馬県が、県立公園「群馬の森」(高崎市)にあった朝鮮人労働者の追悼碑を撤去した。碑の所有団体がルールを破り、政治的に利用したからだ。
この碑の前で毎年行われていた追悼式では、参加者が「強制連行」との用語を使い、日本政府に謝罪や賠償を求める発言などを繰り返してきた。公園の中立性を脅かす約束違反の政治活動であり、県が碑を撤去したのは当然である。
碑は、戦時中に県内の工場などに徴用され、事故や病気で死亡した朝鮮人労働者を悼むため、角田義一元参院副議長らが共同代表を務める「追悼碑を守る会」の前身団体が平成16年に建てた。
法令による徴用は先の大戦時に多くの国で行われ、不当な強制労働ではない。内地の国民も徴用されている。「強制連行」と表現するのは適切ではないというのが日本政府の立場だ。
一方、同会が当初作成した碑文原案には「強制連行」の用語が使われ、日本批判が目立つような内容だった。そこで県が修正を求め、「政治的行事を行わない」ことを条件に設置を許可した経緯がある。
この設置条件は県立公園の中立性を保つため、極めて重い約束事であった。
ところが16~24年の追悼式で政府批判が繰り返されていたことが確認され、県は26年、10年ごとに行われる設置許可の更新を認めなかった。
同会は県の措置を違法として提訴し、1審前橋地裁は同会の主張を認めたが、2審東京高裁は「追悼式で『強制連行』という文言を含む政治的発言があり、碑は中立的な性格を失った」として同会の請求を棄却した。令和4年の最高裁でも同会の上告が棄却され、県勝訴の判決が確定している。
県は同会に対し、碑の撤去と原状回復を命じた。しかし同会は応じず、県は行政代執行により碑を撤去した。山本一太知事は「ルールに反したことがすべてだ」と述べた。
これに対し、同会や朝日新聞の社説が「理解できない暴挙」などと県を批判している。だが、設置条件を破ったのは同会だ。すでに最高裁判決から1年半以上がたち、ルールと司法判断に従わない状態が続いていた。「撤去は暴挙」という批判は全くあたらない。
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2024年2月5日付産経新聞【主張】を転載しています