東京都庁やレインボーブリッジの照明が赤色から虹色に変わっても、まだまだ警戒を緩めるわけにはいかない。
東京都は6月11日、新型コロナウイルスの感染が再拡大するのを防ぐために独自に警戒を呼び掛けた「東京アラート」の解除を決めた。
休業要請を段階的に緩和する都のロードマップも「ステップ3」に移行させ、カラオケ店やバー、パチンコ店なども営業が再開される。
アラートは、感染への警戒を怠らないよう啓発の意味で発動された。だが6月2日の発動後も都内各地の人出は増加傾向にあり、影響はほとんど見られなかった。
11日までの7日間平均の新規感染者は17・9人で、アラート発動の目安とされた20人を切ったことなどが解除の理由だ。だが11日の新規感染者は22人で、目安の数値を上回っている。決して安心だと胸を張れる状況ではない。
秋にも予想される第2波の発生に備え、経済活動を再開しつつ、どう密閉、密集、密接の「3密」状態を避けるかの知恵がそれぞれの業界に求められる。夜の繁華街における感染実態については、さらなる注視が必要である。
感染拡大に一応の沈静化がみられるこの機に急がなければならないこともある。医療体制のさらなる充実である。
重症、中等症の患者が入院するベッドは増床されたが、次の感染拡大にも備えなくてはならない。無症状や軽症の陽性者を収容する療養施設の準備も欠かせない。
経済活動を広げていくためにも、感染の実態を把握する検査態勢の拡充は待ったなしだ。検査による「見える化」は、感染拡大の防止のためにも、最も基本的で有効な手段である。
検査には、ウイルスの遺伝子配列を検出するPCR検査や、特定のタンパク質から感染経験の有無を調べる抗体検査、ウイルスのタンパク質を短時間で検出する抗原検査などがある。それぞれの特性を踏まえ、複合的な態勢の確立が望ましい。
都は19日にキャバクラやホストクラブなど接待を伴う飲食店についても休業要請を緩和する。これでほぼ全ての業種で営業再開が可能となる。
ここで手を緩めてはいけない。再び街全体が自粛状態に戻らぬよう、細心の注意が必要である。
◇
2020年6月12日付産経新聞【主張】を転載しています