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東芝が74年にわたった上場企業の歴史に幕を下ろした。数年後の再上場を視野に入れ、日本産業パートナーズ(JIP)など国内連合の完全子会社として再生を目指す。
上場廃止は、東芝株を保有していた海外投資ファンドなどの「物言う株主」の影響力を排除し、経営の自由度を高めることが狙いだ。経営陣も刷新し、取締役として国内連合から6人を迎え入れる。
短期的な利益還元を求める物言う株主に翻弄され、東芝は明確な成長戦略を描けずに迷走が続いた。長年にわたる経営の混乱に、今度こそ終止符を打たなければならない。
もちろん、非上場化しても東芝の経営再建が容易ではないことに変わりはない。
国内連合は今回、約2兆円で東芝を買収したが、このうち銀行からの借り入れで賄った1兆2千億円については東芝が返済義務を負う。早期に稼ぐ力を高める必要がある。
平成27年4月に発覚した不正会計問題以降、東芝は悪化した財務の立て直しのため、半導体メモリーや医療機器などの有力事業を相次いで売却した。令和5年3月期の売上高は約3兆3千億円と、不正発覚前の半分程度まで減少している。
残った事業のうちパワー半導体は、東芝を買収した国内連合にも出資している電子部品大手ロームと協業する。電気自動車(EV)などの省エネ性能を高め成長が期待できる技術だ。他の事業についても競争力を向上させる施策が欠かせない。
東芝は原発のほか、量子暗号通信など国家安全保障にも関わる重要な機微技術を保有している。海外への技術流出を防ぎつつ、これらをさらに磨いていく経済安保上の貢献は、東芝の企業価値をより高めることにもつながるはずだ。
不正会計問題の発覚後、東芝の経営の混乱が8年に及んだのは企業統治が機能不全に陥っていたからだ。経営陣は取締役選任案に反対するなどした物言う株主の意向を過度に尊重し、経営の主導権を失っていった。
非上場化でこうした株主の圧力から解放される以上、中長期的な視点で思い切った経営改革も断行しなくてはならない。再建をより確実なものとするためにも、実効性のある企業統治を早急に確立してほしい。
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2023年12月21日付産経新聞【主張】を転載しています