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円安を追い風に、インバウンド(訪日外国人客)消費が好調に推移している。
観光庁によると、令和6年の消費額は9月までで5兆8582億円となり、年間で過去最高だった昨年を上回った。
訪日客数の増加も続いており、今年1~9月で昨年1年間を超えた。過去最高だった新型コロナウイルス禍前の元年(3188万人)を上回るペースで推移している。
訪日客の消費は統計上、輸出にカウントされる。すでに電子部品や鉄鋼を上回る規模となり、自動車に次ぐ第2の「輸出産業」になっている。地方では経済活性化の起爆剤として訪日客への期待も大きい。日本経済を支える成長産業として一層の拡大を目指したい。
そのために重要になるのは地方への誘客である。
訪日客の宿泊先は7割超が三大都市圏に集中し、コロナ禍前よりも偏在傾向が強まっている。政府は1人で100万円以上を消費する富裕層の誘客強化のため、北海道東部や北陸、沖縄・奄美など14のモデル地域を設定し、魅力的な観光地とするための支援を進めている。
日本には、モデル地域以外にもその土地ならではの食文化や歴史遺産、祭りなど魅力的な観光資源を持つ地方都市が多くある。それを効果的に発信するプロモーションや多言語によるPR活動が必要だ。
訪日客に地方への分散を促すことは、過度な混雑や観光客のマナー違反といったオーバーツーリズム(観光公害)の対策にもつながるはずだ。
オーバーツーリズムは訪日客の満足度が低下する要因となる。日常生活に支障が出て地元住民の不満が高まれば、政府が目指す「観光立国」の実現はおぼつかない。それぞれの実情に合わせ、どのような取り組みができるのか、さらに知恵を絞ってほしい。
訪日客の増加や、その消費が好調な背景には円安がある。だが今後、日米の金融政策が変更されれば、為替水準が円高方向に振れることもあり得よう。
訪日客消費を成長産業としてさらに拡大するためには、円安の恩恵がなくても外国人が訪れたいと思ってもらえるような魅力を高めていくことが欠かせない。官民を挙げた一層の取り組みが求められている。
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2024年10月24日付産経新聞【主張】を転載しています