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日韓両政府が東京で開いた財務対話で、金融危機時に外貨の融通を受けられる通貨交換(スワップ)協定を8年ぶりに再開することを決めた。
日韓関係が改善に向かう中、経済分野で残されていた懸案を解決する合意である。両国が経済的なつながりを深めるための布石となり得よう。
東アジアでは中国が経済、軍事の覇権を追求し、北朝鮮は核・ミサイル開発をやめない。日韓が外交や安全保障だけでなく、経済でも関係を強める意義は大きい。
韓国の不毛な反日姿勢が日韓対立を激化させたことを教訓に、両国は新たな関係を築くべきだ。
協定は金融危機に伴う通貨下落などに対処するためドルなどの供給を受けるものだ。日韓それぞれの危機時に適用されるが、日本は米国との協定でドルをいくらでも入手できるため、事実上、韓国の危機を想定した協定といえる。
ただし、韓国も足元では十分な外貨を保有しており、協定が必要な差し迫った状況にはない。それでも両国が再開に動いたのは、経済関係の改善を示す象徴としての意味合いがあるからだろう。
協定は、アジア通貨危機で受けた韓国の打撃を踏まえて2001年に結ばれたが、李明博元大統領の竹島上陸などで関係が悪化して15年に打ち切られた。その後も慰安婦問題など反日の動きが障害となり、尹錫悦大統領が関係改善に動くまで再開できなかった。
折しも日本政府は6月27日、輸出手続きの優遇対象国「グループA(旧ホワイト国)」から除外していた韓国を再指定する政令を閣議決定した。3月には半導体材料の対韓輸出管理を厳格化した措置も緩和した。いずれも19年に始めた措置を元に戻す動きだ。
これらは当時の文在寅政権が反日姿勢を強める中、韓国への信頼に基づく輸出管理上の特別扱いを停止する措置だった。日本がそれを解除したのは、対韓輸出関連で韓国に求めていた法制度整備が進んだことに加え、対話が期待できるようになったためだろう。
韓国側には、反日が経済においても悪い結果しかもたらさないことを銘記してもらいたい。その上で尹政権は、自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射問題など解決が先送りされている問題に真摯に向き合うべきだ。そうした姿勢がみえなければ、経済分野を含む関係改善の動きは継続できまい。
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2023年7月3日付産経新聞【主張】を転載しています