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先進7カ国首脳会議(G7サミット)が閉幕した。
ロシアのウクライナ侵略や中東情勢への関心が集まる中での開催だった。これらの課題への対応に加え、中国の国際秩序を乱すさまざまな行動を指摘し、牽制(けんせい)した。世界の平和と秩序の維持に応分の責任を果たすべきG7として当然の表明である。
首脳声明はウクライナへの支援継続を表明し、ロシアに侵略終結とウクライナへの賠償を要求した。G7各国は制裁で凍結したロシア資産の運用益を活用し、年内にウクライナへ総額500億ドル(約7兆8千億円)を融資することで一致した。
パレスチナ自治区ガザをめぐる紛争では、「残忍なテロ攻撃」を受けたイスラエルへの連帯を表明しつつ、バイデン米大統領が示した包括的な停戦案を支持した。
G7がウクライナ、中東情勢で結束したのは妥当だ。
アジアからの唯一の参加国である日本は昨年の広島サミットに続いて、G7がインド太平洋および中国問題を重視する姿勢を示すよう働きかけた。
インド太平洋は独立した議題に位置づけられ、岸田文雄首相は討議の席上、「インド太平洋地域と欧州の安全保障は不可分一体だ」と説いた。首脳声明は「法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋」への関与や「台湾海峡の平和と安定が国際社会の安全と繁栄に不可欠」であることを改めて明記した。
さらに、中国を名指しして「ロシアへの支援に対し、深刻な懸念」を表明した。ロシアのウクライナ侵略継続を可能にしているとして、中国による兵器の部品を含む軍民両用の資材の対露移転の停止を要求した。
中国によるフィリピン船への圧迫を挙げ南・東シナ海の状況にも「深刻な懸念」を示した。中国の過剰生産や「中国に起因する恒常的かつ悪意のあるサイバー活動」、チベット、ウイグルなど中国の人権状況、香港での自由の侵害も問題視した。
首脳声明は中国との建設的かつ安定的な関係の追求やグローバルな課題での協力の必要性を謳(うた)った。それは当然だが、声明を読み通せば、中国ほど広範囲に国際秩序を乱している国はないことが分かる。日本はG7諸国と協力し、対中抑止を図っていく必要がある。
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2024年6月16日付産経新聞【主張】を転載しています