~~
1~3月期の実質国内総生産(GDP)速報値が年率換算で1・6%増となり、3四半期ぶりのプラス成長となった。
また、東京株式市場の日経平均株価は17日、約1年8カ月ぶりに3万円の大台を回復した。東証株価指数(TOPIX)はバブル崩壊後の最高値を連日更新している。
食料品などの物価高が進む中でも個人消費は底堅い。非製造業を中心に上場企業の多くが3月期決算で収益を大幅に改善させた。GDPや株価が改善した背景にはこうした動きがあるのだろう。
もちろん経済の先行きは楽観できない。海外の景気減速など警戒を要することはたくさんある。それでもリスクに身構えるばかりでは決して展望は開けまい。
5月8日に新型コロナウイルス感染症の位置づけが「5類」に引き下げられたのは好材料だ。訪日客の消費が本格化することへの期待もある。回復の流れを確実に捉え、賃上げや投資、消費が連動する経済の好循環を目指したい。
1~3月期の個人消費は前期比0・6%増、設備投資は0・9%増だった。小幅増ながら、いずれも市場の平均的な事前予想を上回った。コロナ禍が落ち着きをみせる中で外食などが復調し、物価高の悪影響を抑えたのだろう。
物価高をもたらしたロシアのウクライナ侵略が長引くことが心配だが、相次ぐ値上げに家計が息切れすることのないよう、春闘でみられた賃上げの動きを中小企業にも広げなくてはならない。
観光や外食、サービス業などでは人手不足が顕在化している。これを機にデジタル化などを一段と進めて労働生産性を高め、賃上げと両立する形で人手不足を解消する知恵も求められよう。
こうした取り組みを強めることで日本企業全体の成長力が高まれば、国内外の投資マネーを株式市場に呼び寄せ、経済活性化につなげることにも期待が持てる。
景気回復が遅れ、金融緩和を続ける日本とは異なり、米欧では急激なインフレに伴う利上げが経済の重しとなっている。米国の銀行破綻をきっかけとする金融不安もくすぶる。米国の債務上限引き上げ問題がこじれて米国債がデフォルト(債務不履行)に陥れば、世界経済は深刻な打撃を受ける。
これらに備えるためにも、日本は一刻も早く経済の力強さを取り戻さなければならない。
◇
2023年5月18日付産経新聞【主張】を転載しています